「第10回アジア武術選手権大会(中国・マカオ)」結果報告
2016年以来のアジア選手権で金1個、銀5個、銅2個を獲得!
「第10回アジア武術選手権大会」がアジア武連(WFA)主催により、9月9日(月)~16日(月祝)(競技は12~15日)に中国・マカオのタップ・シーク・マルチスポーツ・パビリオンで開催されました。
大会には、21の国と地域から約250人の選手が41種目(套路23・散打18)にエントリーし、アジアの頂点を目指して競技を行いました。
本事業は、(公財)日本オリンピック委員会(JOC)選手強化NF事業助成を受けて実施されました。
4年ごとに開催されるこの大会は、コロナ禍での中止もあり、2016年以来8年ぶりの開催でした。日本代表選手団(TEAM JAPAN)は若手を主体とし、男女計12人の選手と監督・コーチ4人、審判員2人が参加し、金メダル1個、銀メダル5個、銅メダル2個を獲得しました。また、2026年愛知・名古屋アジア競技大会やワールドカップのための視察としてオブザーバー4人も参加しました。
今大会は開催地である、マカオ武術協会のYouTubeチャンネルで全世界に向けてライブ放送が行われました。映像はアーカイブで、いつでも視聴できますので、ぜひご覧ください。
大会期間中にアジア武連(WFA)の総会を開催
大会に合わせてアジア武連の第56回執行委員会会議および第19回総会が行われ、執行委員として近藤重和常務理事、伝統武術委員会副主任として谷川大常務理事、日本連盟から長江一将理事兼事務局長が出席しました。会議では各業務報告が行われたほか、会則の改定、来年度の国際大会の提案などが承認されました。
監督・コーチ大会レポート
■目的
8年ぶりのアジア武術選手権大会が、9月9日(月)~16日(月)に中国・マカオのタップ・シーク・マルチスポーツ・パビリオンで開催された。武術套路個人競技で男女合わせて全30種目にエントリーを行い、双人太極拳種目には2組が初めて出場して金メダルを目指した。また今大会と10月に横浜で開催されるワールドカップ大会に備えて、選手8名の海外派遣を行い準備してきた。
9月7日(土)・8日(日)の2日間は、東京・日本連盟トレーニングセンターにおいて直前合宿を実施し最終調整を行った。2019年ルールに基づいた減点箇所のチェックや、演武時間の確認、跳躍の完成度を上げるための対策を行いながら、疲労感や痛みのある選手はケアに通って各自でコンディショニングを積極的に行った。午前9時から開始される競技時間に合わせたコンディショニングを実施し、大会同様の緊張感を持ってリハーサルを行い準備を完了した。
■結果
今回の日本チームは金メダル1個、銀メダル5個、銅メダル2個、合計8個のメダル獲得という成績を得た。最重要目的としていた金メダルを獲得することができたのは大きな成果である。
日本の太極拳は美しく正しい本来の技術を守っていると各国の審判や関係者から評価が高い。最近の傾向として、音楽は効果を狙って編集され派手になり、新しい動作を取り入れてより華やかな効果を狙う流れがある。その中で、日本人選手は太極拳の伝統的な動作、技術に重点をおいたことで本来の太極拳としての評価をあげることができた。
2人の女子長拳選手は、それぞれが2種目において2個ずつのメダルを獲得し、技術レベルの高さをアピールして、日本チームに大いに貢献することができた。
■課題
メダルを獲得した5名は中堅~ベテランの選手たちであり、ほぼ全種目において安定した演技で減点なく競技に臨むことができた。競技経験が豊富であること、メンタルトレーニングに取り組んだ経験を持つことが共通点で、選手としての向上心が高く、苦手を克服することに貪欲である。比べて20歳前後の若手選手たちは高難度をこなすことができるが、競技で実力を発揮する再現性が弱い。規格の減点がほぼ無く技術面では安定しているが、着地時の小さな揺れがバランスミスとして減点され、順位を落としてメダルを逃した選手が数名いた。普段は成功できても大会直前になるとバランスミスが出てくる状態には精神の安定が不可欠である。繰り返しの訓練で成功率を上げる必要はもちろんあるが、緊張や集中といった本番前の心の持ち方をコントロールできるように普段からのトレーニングが必要と考える。
近年、男子長拳・器械種目の難度は各国とも720度を行っており日本チームでも同様に対応している。しかし完成度が高い状態とはまだ言えず、昨年のアジア大会や世界選手権、加えて今大会でも男子長拳・器械種目で720度の角度不足で順位が大きく下がる選手がいた。720度の完成度によるが、申請の時点で角度不足の場合には難度を下げての申請を検討する必要があると思われる。もしくは、選考の時点で3種目とも角度が足りていないのであれば、540度申請で成果を出している選手を選抜する方向も今後の選考の課題である。
来年から新しいルールに変わることが決定し、中国では1週間後の大会から運用が始まる。日本でもできる限り早期に運用を始めて、来年からの国際大会に早く備えることができるように環境を整えていきたい。
直近の課題は1ヶ月後のワールドカップ大会に向かうことである。今大会に続けて出場する選手たちとメダル獲得に向けた練習計画を急いで行い、今回の反省点を明確にしてトレーニングを強化していく。調整の期間が短いため体の疲労には注意が必要である。
■応援ありがとうございました
今回の大会では、熱望していたアジアでの金メダルを獲得できた。日本連盟から数名のオブザーバーを派遣いただき、選手のご家族が8名も観戦に来てくださったことで、応援を実感し非常に大きな支えになった。代表選手は日本の代表であり責任を背負う。自分1人の力だけではなくコーチや周囲の人々に支えられていることに感謝の気持ちを持って、10月のワールドカップに向けて努力を続けていく。
連盟の皆様、関係者の皆様にいつも多大なご支援ご協力をいただき感謝を申し上げる。今後も切磋琢磨を続ける選手への応援を引き続きお願いいたします。
参加国・地域別 獲得メダル数(套路種目)
順位 | 国・地域名 | 金 | 銀 | 銅 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 中国 | 11 | 11 | ||
2 | マレーシア | 3 | 4 | 3 | 10 |
3 | 中国香港 | 2 | 4 | 2 | 8 |
4 | 中国マカオ | 2 | 3 | 5 | 10 |
5 | イラン | 2 | 2 | 4 | |
6 | 日本 | 1 | 5 | 2 | 8 |
7 | シンガポール | 1 | 2 | 3 | 6 |
8 | 韓国 | 1 | 1 | 2 | 4 |
9 | フィリピン | 2 | 2 | ||
10 | ベトナム | 1 | 3 | 4 | |
11 | ウズベキスタン | 1 | 1 | 2 | |
合計 | 23 | 23 | 23 | 69 |
第10 回アジア武術選手権大会(中国・マカオ)日本代表選手団(TEAM JAPAN)名簿と成績
№ | 種目 | 性別 | 氏名 | よみがな | 所属 | 出身 | 出場種目 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 太極拳 | 男 | 荒谷 友碩 | あらや ともひろ | 千葉県 | 千葉県 | 太極拳7位、太極剣1位、双人2位 |
2 | 村上 僚 | むらかみ りょう | 東京都 | 北海道 | 太極拳13位、太極剣2位 | ||
3 | 西口 直輝 | にしぐち なおき | 大阪府 | 兵庫県 | 太極拳9位、太極剣15位、双人8位 | ||
4 | 長拳 | 安良城 基睦 | あらき もとよし | 大阪府 | 大阪府 | 長拳16位、剣術5位、槍術9位 | |
5 | 今井 真秀 | いまい まほ | 大阪府 | 大阪府 | 長拳26位、刀術18位、棍術16位 | ||
6 | 南拳 | 藪本 佳輝 | やぶもと よしき | 大阪府 | 大阪府 | 南拳14位、南刀5位、南棍14位 | |
7 | 太極拳 | 女 | 齋藤 志保 | さいとう しほ | 岩手県 | 岩手県 | 太極拳8位、太極剣3位、双人2位 |
8 | 平田 優花 | ひらた ゆうか | 埼玉県 | 埼玉県 | 太極拳9位、太極剣4位、双人8位 | ||
9 | 庄司 理瀬 | しょうじ りせ | 秋田県 | 秋田県 | 太極拳10位、太極剣13位 | ||
10 | 長拳 | 池内 佳奈 | いけうち かな | 埼玉県 | 埼玉県 | 長拳9位、刀術2位、棍術2位 | |
11 | 貴田 菜ノ花 | きだ なのは | 大阪府 | 兵庫県 | 長拳3位、剣術4位、槍術2位 | ||
12 | 古川 萌華 | ふるかわ もか | 岩手県 | 岩手県 | 長拳10位、剣術10位、槍術8位 | ||
13 | 監督 | 孫 建明 | そん けんめい | 選手強化委員会委員長 | |||
14 | コーチ | 孔 祥東 | こう しょうとう | 同委員会ヘッドコーチ | |||
15 | 前東 篤子 | まえひがし あつこ | 同委員会副委員長 | ||||
16 | 丹井 均 | たんい ひとし | 同委員会強化コーチ | ||||
17 | 指名審判員 | 竹中 保仁 | たけなか やすひと | 審判委員会委員長、国際審判員 | |||
18 | 帯同審判員 | 堀米 昭義 | ほりごめ あきよし | 国際審判員 |