「第3回武術太極拳ワールドカップ大会」結果報告

自国開催に2日間で観客数延べ約6,000人が来場し堂々開催!
金メダル3個、銀メダル8個、銅メダル1個を獲得!

「第3回武術太極拳ワールドカップ(日本・横浜)」を、令和6年10月26日(土)・27日(日)に日本・横浜BUNTAIにて開催しました。主催は国際武術連盟(IWUF)、主管は公益社団法人日本武術太極拳連盟。公益財団法人日本財団ボランティアセンターのボランティアと、NPO法人神奈川県武術太極拳連盟の皆さまにスタッフとしてご協力をいただきました。

自国開催となった本大会には、28の国と地域から延べ約200人のトップアスリートが来日し、大舞台で世界一の座を競いました。また、会場には2日間で延べ約6,000人の来場者が集い、大いに盛り上がりをみせました。各国から集った選手たちによる最高峰の演武や幅広く披露された各アトラクションに、会場は鳴りやまないほどの拍手と歓声で包まれました。大会運営委員会をはじめ、開催に至るまでご尽力いただいた全ての役員・関係者の皆さまに改めて感謝申し上げます。

活躍をみせたワールドカップ日本代表選手たち

活躍をみせたワールドカップ日本代表選手たち

大会前日はウェルカムディナーが行われた

大会前日はウェルカムディナーが行われた

競技は臨場感のあるアリーナで実施

競技は臨場感のあるアリーナで実施

国際武術連盟Sherif Mostafa副会長による開会宣言

国際武術連盟Sherif Mostafa副会長による開会宣言

加藤勝信会長によるビデオメッセージ

加藤勝信会長によるビデオメッセージ

参加選手を代表して荒谷友碩選手、古川萌華選手が選手宣誓

参加選手を代表して荒谷友碩選手、古川萌華選手が選手宣誓

開会式アトラクションで観客を一気に引き込む

開会式アトラクションで観客を一気に引き込む

22種目に28の国と地域から延べ約200人のトップアスリートが集結

10月24日(木)・25日(金)に行われた選手公式練習および、25日夜に開催されたウェルカムディナーを経て、26日(土)午前9時15分から開会式が行われました。

国際武術連盟高志丹会長からのご挨拶を、同Sherif Mostafa副会長が代読され、開会を宣言しました。その後、ビデオメッセージにて衆議院議員・加藤勝信日本連盟会長からの開会挨拶をいただき、また、本大会アンバサダーの山本千尋様よりご挨拶のことばをいただきました。続いて、日本代表・荒谷友碩選手、古川萌華選手が出場選手を代表して選手宣誓を行うと盛大な拍手がおくられました。その後、審判員代表者2人による審判宣誓が行われ、開会式アトラクションへと移り変わると、会場は色とりどりの照明による演出で、一気に熱気に包まれました。

競技は2日間にわたって22種目が実施され、28の国と地域から延べ約200人のトップアスリートが出場しました。各国代表選手たちの素晴らしい演武に、会場は大きな拍手と歓声で溢れました。

なお、大会アンバサダー山本千尋様より、以下コメントもいただきましたので、掲載させていただきます

 

『第3回武術太極拳ワールドカップ』選手の皆様、関係者の皆様、最後まで熱い声援を送って下さった観客の皆様、2日間本当にありがとうございました。そしてお疲れ様でした。

中国武術の洗練された強さに美しさ、見るものを釘付けにする存在感、たゆまぬ努力をされてきた選手の皆様の競技への心意気を日本初開催である記念すべき日に見せて頂きました。

私自身、久しぶりの国際大会の場に立ち合わせて頂きましたが、会場に入った瞬間、かつての何とも言えない緊張感と闘志が思い出され、丸2日間緊張が続く状態でした。

選手時代に母が、「見ている方が緊張するのよ」と言っておりましたが、やっとその気持ちが少し分かったようです。

そしてこの場をお借りして、緊張のあまりスピーチで話せなかった事をお伝えできたらと思います。

神戸の恩師の言葉で「剣は鳳凰の如く、槍は龍の如く舞いなさい」と伝えさせて頂きました。

この言葉の後に一番伝えたかったことは、中国武術の魅力はこの世の何かに例えられない唯一無二の神秘的なスポーツであると競技を離れた私が今1番強く感じているということです。この言葉のおかげで、今は女優業という世界でも胸を張って向き合うことが出来ております。

客席からキラキラとした眼差しでコートに目を向ける子供達の姿を見てこれだけはちゃんと伝えさせて頂きたいと思いました。

中国武術を愛する全ての人に尊敬と感謝を。

山本 千尋

大会アンバサダーを務めた山本千尋さん

大会アンバサダーを務めた山本千尋さん

 

また、日本代表選手団(TEAM JAPAN)も地元の大声援を受け、男女計10人の選手と監督・コーチ5人、審判員3人が参加し、金メダル3個、銀メダル8個、銅メダル1個を獲得する活躍をみせました。また、各競技開始前には、朝山義隆さん・別當響さんによる声出し、応援方法のレクチャーが行われ、会場の一体感は強まり、海外の選手からも今までで一番雰囲気の良い国際大会と絶賛でした。

大会1日目のアトラクションでは、開会式に演出家加世田剛氏による武術舞台「WUSHU」が披露されました。続く表彰式(午前)には、同じく加世田氏による武術とダンスのコラボレーション作品「EMPTY」が披露され、市来崎大祐強化コーチ・大川智矢さん・池内理紗さんらも参加しました。表彰式(午後)には忍者衆団「忍者隠密隊」による剣術アクションやアクロバットなどのショーが披露されました。

大会2日目も会場は変わらぬ熱気で包まれ、参加選手たちはトップレベルの演武を繰り広げました。アトラクションとしては、表彰式(午前)に横浜中華学校校友会国術団による中国獅子舞「龍舞」を、さらに当連盟所属の西日本強化チームが「何度も見返したくなる!」をテーマに新たな形の武術集体を披露しました。続く表彰式(午後)には、アステム湘南VIGOROUSによるエアロビックショーで会場がひとつになり、大会を締めくくる閉会式では、当連盟所属東日本強化チームによる集団演武の披露で大会に華を添えました。

最後に、国際武術連盟Patrick Van Campenhou副会長より、閉会のご挨拶をいただき、大会を締めくくりました。

本大会は、独立行政法人日本スポーツ振興センタースポーツ振興くじ助成事業として実施されました。また、本大会に向けて実施しましたクラウドファンディングでは、180人の方から3,690,650円のご支援をいただきました。皆さまからのあたたかいご支援とご協力に、心から御礼申し上げます。

また、IWUFおよびIOCのほか参加国からも、非の打ち所のない大会であったと非常に高い評価をいただくことができました。開催に携わった全ての役員・関係スタッフの皆さまに、重ねて感謝申し上げます。

会場を埋め尽くすほどの観客が来場

会場を埋め尽くすほどの観客が来場

巨大スクリーンに映し出される映像に観客は息をのむ

巨大スクリーンに映し出される映像に観客は息をのむ

スポーツ振興くじ助成事業横断幕も掲示

スポーツ振興くじ助成事業横断幕も掲示

太極拳で1位を獲得した齋藤志保選手

太極拳で1位を獲得した齋藤志保選手

長拳1位の貴田選手と2位の池内選手は岡﨑温名誉副会長と山本千尋さんより表彰

長拳1位の貴田選手と2位の池内選手は岡﨑温名誉副会長と山本千尋さんより表彰

近藤重和日本連盟常務理事より表彰を受ける安良城基睦選手

近藤重和日本連盟常務理事より表彰を受ける安良城基睦選手

開場時間前から多くの来場者が列をつくった

開場時間前から多くの来場者が列をつくった

大会開催に携わったIWUF役員の皆さまと川﨑雅雄副会長ら

大会開催に携わったIWUF役員の皆さまと川﨑雅雄副会長ら

国際審判員の皆さま

国際審判員の皆さま

武術とダンスのコラボレーション演武

武術とダンスのコラボレーション演武

忍者ショーは海外からの観客も魅了

忍者ショーは海外からの観客も魅了

中国獅子舞による龍舞が会場を盛り上げる

中国獅子舞による龍舞が会場を盛り上げる

西日本強化チームによるアクロバティックな集団演武

西日本強化チームによるアクロバティックな集団演武

エアロビックショーで会場は一体に

エアロビックショーで会場は一体に

競技開始前には応援レクチャーを実施

競技開始前には応援レクチャーを実施

閉会式を飾った東日本強化チームによる集団演武

閉会式を飾った東日本強化チームによる集団演武

メダルを獲得した日本代表選手の皆さん

メダルを獲得した日本代表選手の皆さん

 

本大会限定!ワールドカップ公式記念グッズも販売!

会場に設置された販売ブースでは、太極パートナーズ各社をはじめとした様々な太極拳グッズの販売のほか、大会記念Tシャツやタオル、ぬいぐるみなどのワールドカップ公式記念グッズの数々が販売されました。 こちらの公式記念グッズに関しては、現在も注文の受付を行っております。ご希望の方は、日本連盟ホームページから注文書と注文のご案内をダウンロードのうえ、FAXや郵送でお申込みください。

参加国・地域別 獲得メダル数

順位 国・地域名 合計
1 中国 8     8
2 日本 3 8 1 12
3 インドネシア 2 3 2 7
4 マレーシア 2 3 2 7
5 中国香港 2 2 3 7
6 中国マカオ 2   4 6
7 チャイニーズタイペイ 2   1 3
8 ブルネイ 1 1 1 3
9 シンガポール   2 4 6
10 ベトナム   1 1 2
11 韓国   1   1
11 フィリピン   1   1
13 スペイン     1 1
13 ネパール     1 1
13 アメリカ     1 1
  合計 22 22 22 66
運営を支えた日本財団ボランティアセンターのボランティアスタッフの皆さま

運営を支えた日本財団ボランティアセンターのボランティアスタッフの皆さま

ご協力いただいた中日ボランティア協会の皆さま

ご協力いただいた中日ボランティア協会の皆さま

IWUFから日本連盟に記念品が贈呈

IWUFから日本連盟に記念品が贈呈

大会後に各国選手集合で記念撮影

大会後に各国選手集合で記念撮影

 

「第3回武術太極拳ワールドカップ大会(横浜)」選手強化委員会レポート

目的

日本で武術太極拳の国際大会が開催されたのは1987年の第1回アジア武術選手権大会、1994年の第12回アジア競技会、2001年の東アジア競技大会の3回と、いずれもアジア圏の大会である。今大会は実に23年ぶりの日本での国際大会であり、世界大会としては初めての自国開催になる。日本チームにとっては特に良い成績を獲得したい重要な大会であった。

今回の大会には、昨年11月にアメリカで行われた第16回世界武術選手権大会での成績が上位8位までの選手のみが参加できる。日本チームは男女合わせて7名の選手が出場権を獲得していたが、2名が引退やケガにより辞退。そのため全日本大会で代わりの選手を選抜、国際連盟に申請、承認され、手続きを進めていたが、大会1週間前の最終確認時に1名の選手の出場資格が取り消された。当連盟の出場登録の不備によるもので、残念な結果になってしまった一方で、開催国の権利として国際連盟から日本チームにワイルドカードが与えられ、全日本大会の成績によって選ばれた4名の選手と国際連盟の指名による1名が新たに出場権を獲得し、男女計10名の選手が、武術套路個人競技の16種目にエントリーした。今大会に向けて、代表選手の多くが海外派遣訓練に出向き、訓練を積んで準備を行ってきた。

ここ数年で、日本チームが国際大会で獲得してきたメダルは、合わせて数個の銀メダル・銅メダルであり、金メダルは獲れても1個のみであった。開催国である今大会はいつも以上に金メダル獲得を強く意識し、力を費やして備えた。

結果

日本チームは、金メダル3個、銀メダル8個、銅メダル1個の合計12個のメダルを獲得という、経験上最高の結果を得た。この結果に繋がった要因は、日本チームのほとんどの選手がミスのない完璧な演技を本番で発揮できたことである。今回エントリーした16種目中、14種目でノーミスという初の快挙であった。

男女太極拳・剣ではベテラン選手が出場した。女子太極拳・剣の選手は9月のアジア選手権大会では出番直前で足首を捻挫し惜しくもミスをしてしまったが、わずか1ヶ月で2種目とも完璧な演技ができるところまで回復させて金メダルと銀メダルを獲得。男子も大いに健闘し2個の銀メダルを獲得した。

女子長拳選手、男子棍術選手も、金メダルを獲得することができた。国際大会で女子長拳の種目で日本人が金メダルを獲得したのは国際大会が始まって以来初めてのことである。もう1名の女子選手、そして男子選手もそれぞれが2個の銀メダルを獲得し大いに活躍した。両名は非常に身体能力が高く今後も期待される選手に育っている。

もうひとつの大きな成果は男子南拳選手、男子南棍選手の2名ともがメダルを獲得したことである。世界大会での男子南拳種目としては、2013年以来実に11年ぶりのメダルとなった。

このような成果が得られたのは自国開催によりコンディショニングやリカバリーが容易であったという要因が極めて大きい。宿舎が一人部屋で各部屋に浴槽があったこと、食事が日本食で体調の維持ができたこと、周りのスタッフや観客のほとんどが日本人で家族や知り合いも多かった、こういった普段の生活に近い環境の中で行われたことが本番の安心感を生み、自分の演技に集中することができた。

もう1つは近年各選手が始めだしたメンタルトレーニングが、日々の積み重ねと大会経験によって成果が現れだしているとも考える。

日本チームにとって初めての、日本開催による世界大会でこのような好成績を獲得できたことは非常に大きな成果であった。

課題

今回の大会で得た結果を同様に維持していくことは難しいと考える。他国の選手が次々に失敗したことにより成績が上がった種目もあり、次の大会では他国の選手が成功すれば順位が下がるであろう。日本チームの身体能力がまだまだ大きな課題である。

敏捷性、瞬発力に優れている選手が多く、最高難度である720度回転からの着地を決める他国の選手がたくさんいた。日本チームで最高難度を成功させた選手もいるが、安定してこなせるとはまだ言えず、失敗しないために難度のレベルを下げた選手もいる現状。好成績をとった今、気持ちを改めてゼロからのスタートとしてそれぞれの種目の技術、瞬発力、敏捷性、巧緻性、そして男女ともに高難度動作の完成、レベルアップを目指す。

そして、さらに力を入れたいのは演技レベル点の向上。日本人選手は規格が正確ではあるが、身体の使い方や動作のリズムなどが単調であり、動き方にまだ余力を残しているようにも見える。ひとつひとつの動作に対して理解を深め、意識の使い方や表現力を上げていくことも必要である。

また、メンタルトレーニングを更に習慣づけ、強化していくことが必要である。大会の度に少しずつ効果を実感してきている選手がいる。今回は自国開催ということで、ガチガチに緊張することなく、落ち着いた精神状態で競技に臨むことができたが、裏を返せば、全く未知の外国で開催される国際大会に参加した時、今回のような精神状態で臨めるのかどうか、いささか不安もある。精神の安定、緊張や集中について本番前の心の持ち方をコントロールできるように、普段からのトレーニングが更に必要である。今後も訓練の一貫として続けていきたい。

2025年からは新たな2024年版新ルールが採用される予定であり、日本チームも早急にこの新ルールに対応していく必要があり対策を進める。またポイント制の代表選考基準が施行されることで、選考結果がより明瞭にされていくことを願う。

今大会の直前に出場権を失ってしまった新小田広希選手へのお詫びを申し上げる。新小田選手は全日本大会で刀術の代表に選抜された。その後の4か月間、短い期間で実力を上げるため、多くの努力や犠牲を払い全力を注いで大会に向けた準備に取り組んだであろう。その準備が整った、大会の1週間前に登録不備による出場資格の取り消しが通知された。選手にとって夢に向かう努力は貴重で大きな価値あるものであり、それを拒否された心情は計り知れない不幸であろう。選手が築いた成果や努力が無に帰すことが無いよう、必要に応じて適切なサポートを行いたい。今後はこのような間違いが二度と起きないよう、十分な確認と対策を講じ、選手を含む全ての関係者にとって、公正かつ適正な環境を整えることが我々組織の責務である。今後の活躍を願い、心を一つにしてサポートを続けて行く。

今回の大会には日本全国からたくさんの方々が応援に来られて、熱く大きな声援や拍手を贈っていただき、選手たちのメダル獲得の大きな助けになった。開催にあたっては日本連盟から高額な出費をしていただいたことが日本チームの非常に大きな支えになったことを実感し感謝している。また大会の参加にあたり、連盟の皆様、たくさんのスタッフの皆様に多大なご協力、ご厚情をいただいたことに感謝を申し上げる。今後も切磋琢磨を続ける選手たちへの応援を引き続きお願いいたします。

第3回武術太極拳ワールドカップ大会日本代表選手団名簿と成績

種目 性別 氏名 よみがな 所属 出身 出場種目と成績
1 太極拳 荒谷 友碩 あらや ともひろ 千葉県 千葉県 太極拳2位・太極剣2位
2 村上 僚 むらかみ りょう 東京都 北海道 太極拳4位・太極剣4位
3 長拳 安良城 基睦 あらき もとよし 大阪府 大阪府 長拳2位、剣術2位
4 今井 真秀 いまい まほ 大阪府 大阪府 棍術1位
5 南拳 松川 爽人 まつかわ あきと 大阪府 石川県 南棍3位
6 藪本 佳輝 やぶもと よしき 大阪府 大阪府 南拳2位
7 太極拳 齋藤 志保 さいとう しほ 岩手県 岩手県 太極拳1位・太極剣2位
8 長拳 池内 佳奈 いけうち かな 埼玉県 埼玉県 長拳2位、棍術2位
9 貴田 菜ノ花 きだ なのは 大阪府 兵庫県 長拳1位、槍術5位
10 古川 萌華 ふるかわ もか 岩手県 岩手県 剣術8位
11 監督 孫 建明 そん けんめい 選手強化委員会委員長
12 コーチ 孔 祥東 こう しょうとう 同委員会ヘッドコーチ
13 前東 篤子 まえひがし あつこ 同委員会副委員長
14 丹井 均 たんい ひとし 同委員会強化コーチ
15 勝部 典子 かつべ のりこ 同委員会強化コーチ
16 仲裁委員 及川 佳織 おいかわ かおり 倫理・コンプライアンス委員会副委員長
17 審判員 竹中 保仁 たけなか やすひと 審判委員会委員長、国際審判員
18 王 輝 おう てる 国際審判員