「2024年度冬季シニア強化合宿」を実施

来年度から2024度版ルールとなる 国際大会を見据え、強化合宿を実施

(公社)日本武術太極拳連盟は2024年12月28・29日(土・日)の国際審判員招請<2024年版国際ルール研修会>から2025年1月3日(金)までの7日間、東京・日本連盟トレーニングセンターで冬季強化合宿を実施しました。

今回の合宿は、シニア選手(26人)、役員・コーチ等(7人)の総勢33人が参加しました。また、合宿に合わせてアスリート委員会会議が開催され、合宿最終日には、JADAより承認を受けたEducatorが担当して、参加選手およびコーチを対象に、アンチ・ドーピング/コンプライアンス講習を行い、アクティブラーニングを用いた価値教育を実施しました。

中国から講師を招請して実施した

中国から講師を招請して実施した

2024年度冬季シニア強化合宿レポート 選手強化委員会

【目的】

2025年に開催される国際大会の実施要綱が次々に公開され、シニアは7月のアジアカップ、8月ワールドゲームズ、9月世界選手権と大会が続き、ジュニアは7月にアジアジュニア選手権大会の実施が決定された。以上の全ての国際大会では「2024年版ルール」が採用されると判明し、国内で実施する選考会、全日本大会でも代表選抜のために運用されることとなる。

日本では未経験のルールであり、選手たちの適応が急務となったため、合宿直前の2日間は「2024年版ルール」の研修を受講した。その上で、理解した新ルールに適応するための訓練を合宿で行った。

具体的には、A組の減点に対する規格、B組の減点に対する套路構成、C組の加点については新たに加わった難度動作に取り組み、選手たちがルールに適応できているかどうかの確認が最重要であった。そのため、新ルールの策定者たちを中国から招いて指導を仰ぎ、選手一人一人についての見直しと確認を行った。

【成果】

太極拳班

合宿の直前、発表されたばかりの2024年版ルール研修会が行われ、国際大会で審判長を務める講師を中国から招聘、その講師陣がそのまま合宿に参加していただいたことで、規格や動作をチェックし、ルール上問題がないか細かく確認しながら套路編成をすることができた。

難度動作については、「騰空正踢腿」で上半身と下の足の角度が満たされているか、跳躍難度に入る際、止まらないで助走する方法、あるいは跳躍するように繋げていくという練習を行った。「騰空正踢腿」は、つま先が額に触れなければならないという高い難易度のため敬遠されがちな動作であったが、ルール改訂により額を超えることでもOKとなったことで、套路に取り入れやすくなった。

毎回の課題であるB組評価(演技レベル)についても、選手それぞれに指摘を受けることができ、表現力向上の糸口が見つかった選手もいる。

南拳班

ルール改訂による大きな変化としては、南拳の動作を数多くこなせる選手が一つ上を行くことになるということが顕著となった。例えば、「動静難度から次の難度へ移る間に二つ以上の攻防動作を行わなければならない」というルールにより、南拳にはどのような動作があるのかを知らなければ、套路に組み込むことが難しく、南拳の様々な動作を学ぶきっかけとなった。

今回の合宿では、どの選手も南拳の基礎がないという指摘を受けた。力やスピードを出すにも南拳特有の動き方があり、選手たちもできていなかったことに気づけたことは今後に繋がる収穫であった。

長拳班

ルール研修で採点実習の対象として試演を行った選手たちは、講師を務めた国際大会の審判長たちからの批評を受けることができ、自分の良い特徴や弱点、改善点が明らかになった。選手は常に採点される側であったため、審判の観点からの指導や要求が新鮮で、採点競技に必要な客観的な視点に気付く機会となった。

套路の構成に対する減点が新しく増え、適応を考えることによって、採点競技の特性である、目線や音の響きまでが減点の対象になること、器械の扱いもB組の得点に関係することの理解が進んだ。

東西のベテランや国際大会で活躍している選手たちと新人選手たちが一堂に会し、一緒に考え練習する久し振りの機会だった。ベテランも新人選手もそれぞれが持つ能力が互いの刺激となり、精神的にも学ぶ貴重な機会になった。

【課題】

太極拳班

「武術的動作」ということを意識して套路構成をしなければならないことに加えて、跳躍から着地する場合の定式も何かしらの動作でなければならず、特に太極剣においては左手に剣を持っての跳躍が多いため、どのような動作で着地したらよいか試行錯誤することになる。

太極拳のリズムを壊さずに跳躍難度へ繋げることに関しても、あまりタメを作らずに跳躍することができる身体能力の向上訓練も必要となってくる。

2024年版ルールは発表されたばかりで曖昧な部分もあるが、これから少しずつ明確になっていくと思われる。春に行われる中国での大会で、どのような採点になるのかを注視したい。

南拳班

「2024年版ルール」では、これまで基準が緩くなっていた動作規格や、体力のある前半に難度を固めて配置するという、いささか雑になっていた套路構成を、根本的に見直すことになる。套路中の難度の配置を変えたり、動静難度のあとに攻防のある動作を入れることで、体力配分も考えなくてはならない。

また、独特な南拳の動きを正しく行うことで、今までとは違った筋力や体力を使うことになると思われる。普段の訓練において、南拳の基礎訓練を今まで以上に取り組む必要がある。

長拳班

最優先課題は、新しい構成の套路をそれぞれの選手が作り上げること。また、日本チームは規格がしっかりしているが難度のレベルが追い付いていないと講師から指摘を受けた。難度の種類が増えた今回の機会に、こなせる難度を増やせるように訓練を続けて、独自の構成に作り上げていきたい。

新ルールでは、武術の体操化、ダンス化を是正し、武術本来の風格を取り戻す方向性と学び、長拳の型や方法を研究して、套路構成に反映させることが必要と理解した。プロチームとは違い、私たちが訓練に使える日々の時間は短い。効果的な時間の使い方が必要であると痛感し、訓練に対する考え方を新たな課題と位置付けて、不利な状況を克服していきたい。例えば、コートに入って動く際は大会を想定して全力で行うべきで、流しで行うことは大会の演技に繋がらず行う意味がない。こうした当然のことに今更ながら気付き、今すぐに改善して実行する。

強化練習にほとんど参加していない遠方在住の選手たちにとっても、今後必要となる対応の方向性を考え直す機会になると思われ、期待したい。

国際ルール研修会では選手側の観点から講習を実施

国際ルール研修会では選手側の観点から講習を実施

準備運動も入念に行う

準備運動も入念に行う

太極拳班の講習の様子

太極拳班の講習の様子

長拳班の講習の様子

長拳班の講習の様子

南拳班の講習の様子

南拳班の講習の様子

2024 年度冬季シニア強化合宿 対象選手名簿

東日本対象選手

氏名 ふりがな 性別 種目 所属
1 今井 真秀 いまい まほ 長拳 刀術 棍術 大阪府
2 鎌田 慎ノ介 かまだ しんのすけ 長拳 剣術 槍術 北海道
3 品川 歩夢 しながわ あゆむ 長拳 刀術 棍術 兵庫県
4 池内 佳奈 いけうち かな 長拳 刀術 棍術 埼玉県
5 古川 萌華 ふるかわ もか 長拳 剣術 槍術 岩手県
6 宮森 創大 みやもり そうた 南拳 南刀 南棍 北海道
7 荒谷 友碩 あらや ともひろ 太極拳 太極剣 千葉県
8 蝦名 冬馬 えびな とうま 太極拳 太極剣 東京都
9 西口 直輝 にしぐち なおき 太極拳 太極剣 大阪府
10 村上 僚 むらかみ りょう 太極拳 太極剣 東京都
11 磯野 水響 いその ひびき 太極拳 太極剣 千葉県
12 齋藤 志保 さいとう しほ 太極拳 太極剣 岩手県
13 庄司 理瀬 しょうじ りせ 太極拳 太極剣 秋田県
14 寺岡 瑠里 てらおか るり 太極拳 太極剣 北海道
15 平田 優花 ひらた ゆうか 太極拳 太極剣 埼玉県

西日本対象選手

氏名 ふりがな 性別 種目 所属
1 安良城 基睦 あらき もとよし 長拳 剣術 槍術 大阪府
2 高 龍大 こう りゅうだい 長拳 剣術 槍術 大阪府
3 新小田 広希 しんこだ こうき 長拳 刀術 棍術 大阪府
4 田中 駿志 たなか しゅんじ 長拳 刀術 棍術 愛知県
5 中田 琉月 なかだ るつき 長拳 刀術 棍術 大阪府
6 貴田 菜ノ花 きだ なのは 長拳 剣術 槍術 大阪府
7 久下 瑠那 くげ るな 長拳 刀術 棍術 大阪府
8 小櫻 果 こざくら このみ 長拳 刀術 棍術 広島県
9 松川 爽人 まつかわ あきと 南拳 南刀 南棍 大阪府
10 藪本 佳己 やぶもと よしき 南拳 南刀 南棍 大阪府
11 花野 宏美 はなの ひろみ 太極拳 太極剣 兵庫県

中国招請講師:林小美、劉志鋼、高楚蘭、陳国安
コーチ:孫建明、孔祥東、前東篤子、丹井均、勝部典子、中田光紀(アンチドーピング等講習)、別當響(アスリート委員会)

【アンチ・ドーピング/コンプライアンス研修レポート】中田光紀(選手強化委員会コーチ・JADA承認Educator)

【内容】

今回はテーマを「健康を守るためのアスリートの権利と責務」として、アスリート役と医師役に分かれて実際に病院にかかることを想定し、アスリートとして医師に何を伝えるべきなのか、アクティブラーニングを活用しつつ個々で考え共有し理解を深めました。

【今回の狙い】

アスリートとして普段からアンチドーピングやクリーンスポーツの意識付けを行いつつ、アスリートとしての自覚を強く意識し、競技力や意識向上につなげたい。

合宿中にアスリート委員会会議を実施

合宿中にアスリート委員会会議を実施

最終日にアンチ・ドーピング/コンプライアンス講習を行う

最終日にアンチ・ドーピング/コンプライアンス講習を行う