2017年度冬季海外強化合宿(福建)を実施
強化指定選手19人、強化コーチ2人が参加
(公社)日本武術太極拳連盟は、「2017年度冬季海外合宿」を、昨年末12月28日から今年の1月5日まで、今回初めてとなる中国・福建省福州市武術運動管理センターで実施した。
本合宿は公益財団法人日本オリンピック委員会選手強化NF助成を受け実施されたもので、今年度の日本代表選手を含む男女選手合わせて19人と日本連盟選手強化委員会のコーチ2人が参加した。
2017年度冬季強化合宿レポート
2017年度の冬季強化合宿に関して、各種目について先に報告した後、全体の総括を報告する。
南拳組レポート
南拳選手の多い福建省での合宿を通して、トップレベルの選手たちの訓練を間近で体感することができ、刺激の多い合宿となった。福建省武術隊1軍コーチである、魏先生の熱意ある指導を受けることができ、今後の課題を明確にすることができた。
訓練は、套路と難度動作を中心に行われた。套路では1人ずつ細かく指導してもらうことで、非常にボリュームのある套路訓練となった。魏先生の繊細で的確な指導に加えて、中国人トップ選手の動きを間近で見ることで吸収できる技術もたくさんあったように感じる。先生だけでなく、選手の方たちにも熱心に指導していただき、終始勉強となる訓練であった。
難度を中心とした訓練では、福建チームの圧倒的な跳躍の高さと安定感に目を奪われた。中国人選手はほとんど失敗しないのはもちろんのこと、着地動作の安定感が日本人選手とは大きな差があったように感じる。常日頃からの跳躍量の多さによって作り上げられている難度の質の違いを感じた。
また、トレーニング量も非常に多く、ウエイトトレーニングや走り込みなど、基礎的なトレーニングを非常に重要視しており、こういった取り組みも難度動作や武術動作へ貢献しているのではないかと考えられる。
今回の強化合宿では、熱意ある福建チームと一緒に訓練することができる貴重な機会であった。今回学んだことを日本でも継続して行い、自分たちのステップアップへと繋げていきたい。
長拳組レポート
今合宿において長拳組は組み合わせ動作を中心に行い、その他に難度動作の訓練を行った。
<組み合わせ>
今回先生から動作の意味や身体の使い方、器械の軌道をよく考えて動くようご指導いただいた。選手全員が動作の意味、身体の使い方を理解せずただやっているということが多かったように思う。そのため意味を理解し反復練習する必要があると感じた。特に身体の使い方や目線の動かし方を考える機会が多かった。日本に帰ってからも意識して練習すべき点であり、日本人選手の課題だと言える。また練習の中で自分の動作の動画を撮影し、他の選手が改善すべき点を指摘し合った。お互いが改善点を指摘することで自分たちの課題点を客観視することができた。今回の合宿のみで終わらせることなく日本での練習においても他の選手を見て勉強することが非常に大切だと思う。
<難度動作>
中国人選手とのレベルの差はあるが、昨年と比べてどの選手も難度動作においてレベルは上がっていると思う。中国人選手との違いとして跳躍力や回転力だけでなく着地までしっかり決めるところだと思う。日本人選手は着地までしっかり練習するという習慣があまりないように感じる。中途半端に難度練習をすると怪我に繋がることもあるため今後難度練習をする際は必ず着地まで考えて練習する必要がある。
<全体を通して>
中国チームと練習を行い、チームが一つとなって基本から跳躍、組み合わせ、分段まで目的や時間を決めて練習していることがとても印象に残った。日本での練習を思い返して見ると選手それぞれが自分のペースで練習していることが多いと思う。今回の合宿で個人競技でもチームとして練習することは非常に大切なことだと感じた。これから練習する際は一人一人目的を持って練習すること、練習内容、練習内容に対する時間を決めて練習し、選手それぞれがレベルアップしていく。
また今回先生方、中国人選手の皆さんに非常に丁寧に熱心にご指導いただき、選手それぞれが自分に足りないもの、これからの課題を確認することができた。このような機会をいただけたことを忘れず、一人一人が高い意識を持ち練習していくことが大切である。
太極拳組レポート
太極拳組は日本人選手7人が李強コーチの指導の下、7日間の訓練に臨んだ。
今年から冬季合宿の場所が北京から福建省に変わったが、日本の太極拳選手の多くは過去に何度か個人的な遠征で福建省に訪れたことがあるため、環境の変化に早く適応しその分訓練に力を注ぐことができた。
今回の合宿では、李強コーチだけでなく、国際大会等で優秀な成績を収めているベテランの選手も指導に当たってくださったため、例年以上に学ぶことが多かった。また、若い選手もお手本として見ることができ、いつもの合宿にはない利点を得ることができた。
練習内容は発勁動作を中心として行った。日本人選手は発勁動作のバリエーションが少なく、またそれぞれの動作を正しく行えてないことが多い。そのため、中国人選手から流行りの動作を教わることや、一つ一つの身法や緩急のつけ方、動作の意味を学べたのは実に有意義なことであった。
また、演武中の表情など表現力について指摘されることがあった。表現力に関しては指摘されてすぐに改善される問題ではないため、大きな課題として残る。
訓練中には難度動作も行った。日本人選手は成功率が低く、その原因は姿勢、目線、筋力によることがわかった。特に筋力に関しては中国人選手と比べて大きく劣るため、この合宿で学んだ筋トレメニューを参考に、日本では訓練時以外にも日々の生活で時間を見つけて筋トレに取り組むようにしたい。
日本での訓練の際には、この合宿での訓練メニューを自分達に合わせて取り入れていくべきである。時間配分を考え、メニューを紙に書いて可視化するなどの工夫が必要である。
最後にこの合宿でお世話になった李強コーチはじめとした各コーチ、福建省武術チームの選手達に慎んで感謝を申し上げる。
全体総括
例年中国北京市で行っていた年末合宿であったが、今年から市の政策のために北京市で行うことができず、福建省で行うことになった。選抜された日本人選手19人は日本よりも暖かい気候の下、コートが7つある充実した訓練施設の下で約1週間の訓練を受けた。
今年はアジア競技大会、世界大学生武術選手権等の国際大会を控えており、これらの大会へ向けた訓練を行った。日本人選手が訓練に参加した福建省武術隊は中国国内でも練習量が多く、各選手の競争率も高い。そのため国内外の大会で長拳、南拳、太極拳の各種目において福建省武術隊からこれまでに数多くのチャンピオンを輩出している。そのようにレベルの高い武術隊内での刺激的な訓練環境は日本人選手の技術向上に大きく繋げることができた。また今合宿の日本人選手は大学生を中心とした若い選手が多く、経験の少ない彼らも本場中国で自身と世界トップのレベルの差を知り、訓練することで、世界でも活躍できる一流の選手にいち早くなれることであろう。
日本の競技としての武術太極拳はアマチュアであるが、先に挙げた国際大会でも上位を狙えるレベルにある。それもこれまで日本チームと中国チームの間で訓練を通した交流があったことによる。この先もこのような交流を続けていくことで国際大会での目覚ましい成果が期待できる。
今回、福建省武術センターの協力のおかげで福建省武術隊との訓練が実現でき、コーチ方、選手達からは訓練以外にも多くのおもてなしを受けたこと深くお礼を申し上げる。そして日本連盟がこの合宿を実現させていただいたことに重ねて感謝申し上げる。
(日本連盟 選手強化委員会 孫建明ヘッドコーチ)
2017年度 冬季福建合宿 参加者名簿
No. | 種目 | 性別 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|---|---|
1 | 太極拳 | 男子 | 荒谷 友碩 | 千葉県連盟 |
2 | 菊地 創士 | 青森県連盟 | ||
3 | 藤沢 佑 | 秋田県連盟 | ||
4 | 村上 僚 | 東京都連盟 | ||
5 | 脇田 圭佑 | 新潟県連盟 | ||
6 | 女子 | 齋藤 志保 | 岩手県連盟 | |
7 | 庄司 理瀬 | 秋田県連盟 | ||
8 | 長拳 | 男子 | 鎌田健太郎 | 東京都連盟 |
9 | 小松 資 | 埼玉県連盟 | ||
10 | 坂本 蓮 | 埼玉県連盟 | ||
11 | 別當 響 | 大阪府連盟 | ||
12 | 松本 鷹仁 | 東京都連盟 | ||
13 | 村上 舜平 | 東京都連盟 | ||
14 | 女子 | 池内 理紗 | 埼玉県連盟 | |
15 | 柏熊 結姫 | 東京都連盟 | ||
16 | 本多 彩夏 | 東京都連盟 | ||
17 | 南拳 | 男子 | 朝山 義隆 | 大阪府連盟 |
18 | 毛利 亮太 | 大阪府連盟 | ||
19 | 女子 | 阪 みさき | 大阪府連盟 | |
20 | コーチ | 孫 建明 | 選手強化委員会ヘッドコーチ | |
21 | 孔 祥東 | ジュニア普及委員会 ジュニアヘッドコーチ |