「第18回アジア競技大会・武術太極拳競技」アジア最大のスポーツの祭典で、荒谷選手が銀メダルを獲得!
「アジア大会2018」は、8月18日(土)から9月2日(日)までインドネシア/ジャカルタ・パレンバンで開催され、45の国・地域から11,000人を超える選手が40競技462種目に出場した。
武術太極拳は、正式種目としてジャカルタで実施され、日本連盟は男女計6人の代表選手と谷川大監督、孫建明コーチ、中村剛審判員を派遣した(下表参照)。
日本代表選手団は、中国での直前合宿を経て、8月13日(月)の結団式に出席、さらに今回は荒谷友碩選手が各競技団体代表約50人が出席した出陣式にも出席した。その後、15日(水)には日本を出発し、万全の準備を整えて、19日(日)からの競技に挑んだ。
まず最初の種目に、今大会がシニアの国際大会初挑戦となる坂本蓮選手が出場し、各国の実力者が集まる中で堂々の7位。その他の選手も健闘をみせたが、惜しくもメダルに届かず、套路最終日を迎えた。
最後の種目に出場した荒谷友碩選手は、1種目目の太極拳では、4位ながら1位と0.05差、2位の2選手とは同点と僅差の得点をマーク。注目の集まる中で見事、太極剣で2位となる演武をやり遂げ、総合で銀メダルを獲得し、歓喜の笑顔をみせた。
大会期間中にアジア武術連盟(WFA)の各種会議を開催
大会に合わせて、アジア武術連盟(WFA)の執行委員会会議や伝統武術委員会など各種会議が開かれ、日本連盟から岡﨑温会長代行、近藤重和事業委員会委員長、谷川大選手強化委員会委員長、及川佳織審判委員会委員長がそれぞれ該当の会議に出席した。
会議では各国の状況報告・提案などが検討され、役員改選についても提案が行われ承認された。
日本からは、岡﨑会長代行が新役員に選任され、さらに及川氏が技術委員会に選任、谷川氏が伝統武術委員会副主任に継続して選任された。
アジア最大の大会にメディアの注目も集まる
今回のアジア大会は、東京2020オリンピックに向けて日本代表選手団は、選手762人、役員334人、総勢1,096人と過去最多の人数で臨み、 史上2位となる金メダル75個、銀メダル56個、銅メダル74個を獲得した。
武術太極拳競技もテレビや新聞など各メディアでも取り上げられ、注目を集めた。
また、大会前には秋葉原UDXビルにおいて、アジア大会告知のプロモーションビデオが流れるなど、今まで以上に武術太極拳の露出が増え、認知度が高まった。
大会成績一覧はこちらに掲載する。
監督レポート:谷川 大(選手強化委員会委員長)
武術は世界的な普及と発展を果たし、単独種目としてはジュニア・シニア共に世界選手権、地域性の選手権を長年にわたり開催している。オリンピック参加を目指して、長年にわたる努力を続けてきた武術ではあるが、現在のところ残念ながらオリンピックへの参加を果たしていない。非オリンピック種目としての武術が、種目として参加する国際性の総合スポーツ大会として、アジア大会は最上位に位置するものである。またアジア地域における武術の技術レベルは大変高いものであり、その意味でもアジア大会の武術競技は世界のトップレベルの大会ということができる。一方オリンピック種目の代表選手にとっても、アジア大会は近隣諸国のライバルとの対戦となるため、大きな意味を持っているようである。
今回のアジア大会、舞台はインドネシアのジャカルタ。酷暑の日本に比べてもさらに厳しい暑さが予想されたが、大会期間中朝晩は思いのほか涼しく、快適に過ごすことができた。また、アジア大会では会場までの交通手段も毎回大きな問題となるが、ここでも会場は選手村からも近距離であり、恵まれたものであった。 今回日本は若いチームで大会に臨んだ。6人の代表選手のうち過去のアジア大会代表経験者は山口選手一人。いずれもジュニア時代から国際経験を積んでいる選手ばかりであるが、アジア大会の舞台はやはり特別なものである。
各選手は事前の福建省での調整を経て、13日の日本選手団結団式に参加。15日に大会開催地のジャカルタ入りした。結団式では荒谷選手が出陣式に、また出発時の羽田空港では山口選手が壮行セレモニーにそれぞれ代表として参加し、決意表明をした。各国選手がしのぎを削る中、荒谷選手は太極拳・太極剣総合で2位銀メダルを獲得した。大会日程後半に出場した荒谷選手は2種目に安定した力を発揮し、昨年の世界選手権に続き、髙いレベルの演武をみせて入賞を果たした。各選手はそれぞれ持てる力を十分に発揮し、入賞を果たすなどした。自選難度競技は細かなミスでも順位に大きな影響が出るため、選手は大変緊張した中で調整をしなくてはならず、この選手たちをまとめ、実力を十力発揮させるコーチもまた、大変緊張する。荒谷選手の入賞に、孫建明ヘッドコーチとともに安堵し、緊張が一気に解けた。参加した選手は現在の自身の状況をよく理解し、今後に向けての目標設定をし、早くも練習に取り組んでいる。
今年11月には第2回套路ワールドカップがミャンマーで開催される。日本代表のさらなる活躍に期待したい。また、国際大会の選に漏れた選手も来年以降に向けて切磋琢磨されることで、日本のレベルを高いものにしていただきたいと考える。
一方、今回の大会ではアジア地域でのさらなる普及と発展がみられた。今回の入賞選手を見ると、今までの国際大会で入賞経験の少ない国が、コンスタントな実力を発揮してきている。特に南アジアのインド、ネパールなどは難度動作を十分にこなし、なおかつ基本技術でも目覚ましい進歩を見せてきた。東アジア、東南アジアの各国と、西アジアのイランに加え、これらの国が台頭してきている中、日本はどのように戦っていくべきなのか。日本の現在の特長に大変正確な基礎技術がある。これはジュニア時代から、合宿などを通じて長い時間をかけて養ってきたものである。しかし、それだけで勝負できる状況はすでに過ぎ去っており、さらなる身体素質と難度技術のレベルアップ、高い完成度が求められている。基礎技術同様に難度動作の習得完成にも長い時間が必要となってくる。プロチームではない日本の選手には苦しい状況になろうが、高い目標を掲げて更なる努力を続けていただきたいものである。
今大会参加にあたり、ご支援ご協力いただいた連盟の皆さま、所属各チーム、ご家族と関係の皆さまに感謝申し上げたい。また、大会派遣と期間中に支援いただいた日本オリンピック委員会にも合わせて感謝申し上げて報告といたします。
「第18回アジア競技大会・武術太極拳競技」日本代表選手団名簿
人数 | 性別 | 氏 名 | 所属 | 出場種目と成績 |
---|---|---|---|---|
1 | 男子 | 荒谷 友碩 | 千葉県連盟 | 太極拳・太極剣 総合2位 |
2 | 別當 響 | 大阪府連盟 | 刀術・棍術 総合5位 | |
3 | 坂本 蓮 | 埼玉県連盟 | 長拳 7位 | |
4 | 毛利 亮太 | 大阪府連盟 | 南拳・南棍 総合5位 | |
5 | 女子 | 山口 啓子 | 東京都連盟 | 剣術・槍術 総合5位 |
6 | 齋藤 志保 | 岩手県連盟 | 太極拳・太極剣 総合9位 | |
7 | 監督・コーチ | 谷川 大 | 選手強化委員会 委員長 | |
8 | 孫 建明 | 選手強化委員会 ヘッドコーチ | ||
9 | 審判 | 中村 剛 | 審判委員会副委員長・国際審判員 |