「第8回世界カンフー選手権大会」結果報告
~ 伝統武術の世界を展開~
「第8回世界カンフー選手権大会」は、6月16日(日)から18日(火)の間、中国・四川省峨眉山において、50ヵ国以上から5,200人以上の参加者を得て盛大に開催された。峨眉山は古くから仏教の聖地として知られており、温泉も湧く風光明媚な土地である。国際組2コート、中国国内組6コートの会場には多くの選手があふれ、会場は終始熱気に包まれていた。大会は採点形式で行われ、各種目出場者の一割を一等賞、二割を二等賞、三割を三等賞として表彰が行われた。
日本からは選手12人、オブザーバー1人、谷川大団長、李自力監督、劉一丁コーチの16人が参加した。日本チームは二つの一等賞獲得をはじめ、全員が入賞した。参加種目も様々で、普段交流する機会も少ないが、互いに応援するなど、チームとしてもよくまとまっていた。参加された皆さんと応援していただいた各方面に改めて感謝申し上げたい。
百花繚乱 武術の多様性を示す
カンフー選手権の特徴は種目の多様性にある。それぞれの土地で長く受け継がれたもの、仏教道教などの聖地に起因するものなどさまざまであり、開催地・四川省では峨眉派の武術が各派ごとに伝承されている。大会は大まかな区分を基に、エントリーの状況と種目別の人数によって、種目を自在に構成できることから、参加者はカテゴリーによる制限にそれほど囚われることなく参加できる。また、純粋な伝統種目ばかりではなく、規定種目も含む構成となっており、太極拳種目、武術にもそれぞれが習得しているものを基に、多様な参加の可能性を持つものとなっている。このことが武術太極拳の多様性をよく表し、まさにカンフーの祭典というにふさわしいものとなった。
競技種目として独自の発展を遂げ、世界選手権、各地域大会でジュニア選手も含めた多くの国際大会が行われる中、その根源にある多くの種目が一堂に会して、まさに百花繚乱の様相を呈するこの大会は武術の奥深さと、世界的な普及をよく表している。しかし、参加人数が多いことと多様であるがためにエントリーの整理と出場順の整理、ルールについて技術会議で全体に周知徹底することもなかなか難しかったようである。実際には太極拳種目とその他の種目が混在するなどの問題が発生したが、大会組織委員会と審判組の迅速な対応で大きな混乱もなく大会は運営されていった。
さらに大会期間中は各国から伝統武術の名師を招いてのセミナーも行われ、日頃触れる機会の少ない技術に触れようと、多くの参加者でにぎわった。大会運営をはじめ様々な方面にご尽力いただいた各方面の皆さまに感謝申し上げたい。
参加者の構成と人数
多くの参加者を得たこの大会であるが、中国国内組の盛り上がりも回を重ねるごとに大きなものとなっており、各省、都市から複数のチームがエントリーし、各地の特色を表す種目を見せてくれた。武術協会のチームと民間のチームがそれぞれに参加するところに、武術が民間に深く根付いていることを改めて示すものとなった。一方国際組もまた多様な構成となっている。1ヵ国1チームという基本的なルールはあるものの、各国国内の武術団体から成るチームは本当に多彩である。大会中に伺ったところでは、武術に対する取り組みも様々で、いわゆる修行の一環として長く修練を積まれている方もあれば、放課後に武術を練習しつつ、学業の手伝いをするといったアフタースクールのスタイルまで各人各様、その土地のライフスタイルに応じて武術が広く親しまれていることを実感した。さらに参加している選手の套路を見て、初対面の者同士が同門であることを知って交流を深めるなど、まさに以武會友である。国際組には中国代表チームも参加。監督は王培昆先生。選手には地元の名手から各種目の代表的な選手まで日本でも知られた方も多数参加され、そのレベルの高さを示した。今回アメリカチームは500人という大規模チームで参加した。300人の選手に参観の家族、保護者などを含めたものであるが、ここには学校が夏休みの時期に入っていたことも大きく影響していたようである。それとは逆に国内、国際の大きな大会を間近に控えた国からはそれほど多くの参加が見られなかった。国際大会の数は年々増加しており、開催時期によっては参加者が分かれてしまうなどの問題が起きている。日本からの参加にも国内行事、他の国際大会との関係による影響があったものの、2年に一度開催されるこの大会にはエントリー人数の制限もないため、機会があれば是非参加を検討し、武術太極拳がどれほど多様なものであるかをその目で見ていただき、その場に立って体験していただきたいものである。
伝統武術のさらなる発展を
日本国内にも伝統武術を修練される方は多数いらっしゃる。また、そのアプローチも様々なものであろうが、今後多くの方が一堂に会す機会を設けていくことで、伝統武術のさらなる普及を図っていきたい。国内でも伝統武術の大会が多数開催されており、今後ますます盛んになる事であろう。多くの皆さんが交流し、手を携えていくことが、オリンピックを目指す国際競技種目としての武術太極拳と共に武術太極拳の全面的な発展につながるものとなろう。
現在、伝統武術の国際大会としては、2021年に世界カンフー選手権の次回開催が予定されている(開催地、時期は未定)。また昨年より5年間江蘇省南京でアジア伝統武術選手権大会の開催も決定している。今年は南京近郊の高淳県で開催。実施時期は未定であるが、アジアの各国からハイレベルな選手が参加して、技術の粋を競う。次回はこの記事をご覧の皆さんが主役として活躍されますように。
(伝統武術委員会委員長・谷川大)
「第2回アジア伝統武術選手権大会」情報
中華人民共和国 江蘇省 南京高淳県で開催。
開催時期、大会要綱等は決定次第に会報、ホームページ等にてお知らせいたします。
皆さまのご参加をお待ちしております。
第8回世界カンフー選手権大会 日本代表選手団成績・名簿
役 職 | 都道府県 | 団体名 | 氏 名 | 出場種目と成績 |
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選 手 ・ オブ ザーバー | 茨城県 | 新治武術太極拳協会 | 國土 千尋 | 陳式太極拳E組・4位(三等) その他の太極器械E組(陳式扇)・5位 |
東京都 | 東京中国武術協会 | 落合 健夫 | その他伝統形式D組(沙氏通背六路)・8位(二等) | |
小島 隆平 | その他伝統形式D組(戳脚)・3位(一等) | |||
東京太極拳協会 | 入沢 淳子 | その他の伝統種目F組(呉式太極拳)・4位(二等) その他伝統器械F組(呉式太極剣)・7位(三等) |
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武当山功夫学院 日本校 | 上田美紀子 | その他太極拳E組(武当太極拳18式)・8位(三等) その他太極剣E組(武当太極剣36式)・6位 |
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宮永 治幸 | その他伝統太極拳F組(武当太極拳18式)・7位(三等) | |||
梅原匠一郎 | その他太極拳D組(武当太極拳18式)・8位(三等) | |||
神奈川県 | 横浜市太極拳協会 | 福西 忠 | 少林拳E組(少林拳)・3位(二等) その他太極器械E組(太極扇)・9位 |
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長野県 | 禅武研究会 | 酒井 謙輔 | 少林拳E組(少林七星拳)・6位(三等) その他伝統単器械E組(少林刀)・10位 |
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山口県 | 武術太極拳協会 | 下川 美富 | 42式太極拳E組・1位(一等) その他太極器械E組(太極扇)・2位(二等) |
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福岡県 | 日本華麗太極拳連合会 | 渡辺 殿均 | - | |
江見 礼子 | 42式太極剣F組・5位(二等) その他伝統種目F組(48式太極拳)・9位(三等) |
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河﨑 正樹 | その他伝統太極拳F組(48式太極拳)・6位(三等) その他太極器械F組(42式太極剣)・8位 |
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団 長 | 伝統武術委員会 委員長 | 谷川 大 | - | |
監 督 | 伝統武術委員会 副委員長 | 李 自力 | - | |
コーチ | 国際交流委員会 副委員長 | 劉 一丁 | - |