輝け!武術太極拳アスリート ~三船陸選手・三船仁選手~
日本武術太極拳連盟・選手強化委員会が認定する強化指定選手の活動や競技に向けた想いなどをご紹介します。
武術太極拳、自選難度長拳の三船陸です。
福岡県出身ですが、大学進学と同時に大阪へ引っ越し、現在は大阪府連所属の選手として活動しています。福岡時代
地方の武術チームにはよくある話ですが、僕の地元、福岡のチームには常設の練習施設がなく、競技用の絨毯もありません。高校生まで僕は、学校の体育館などで日々練習に励んでいました。一緒に練習する仲間も、年が近く、毎日練習に来ていたのは双子の弟だけだったので、武術をしていて寂しいと思ったり、恵まれた環境にあるチームを羨ましく思ったりすることもありました。
高校生の時、練習場所として使わせてもらっていた体育館は、高校からすぐ近くにありました。第三套路でJOCに出たい、結果を残したいと思った僕らは、学校が終わってから練習が始まるまでの17:00〜18:30までの間、近くの市民体育館で自主練を始めました。
たった二人の自主練だったので、筋力トレーニングがメインの時間でしたが、平日の練習の前には必ず自主練をしていました。
今考えると練習内容もトレーニングも杜撰なもので、もう少し考えて時間を使うべきだったと今でも後悔しています。
しかし、孤独を感じながらも、もっと武術が上手くなりたい、もっと良い選手になりたいと強く思っていました。あの頃の気持ちは選手になった今でも常に持ち続けています。また、質のいいものではありませんでしたが、高校時代のトレーニングが今のフィジカルの基礎になっていると思っています。
代表選抜について
国際大会の代表選手になることは、ジュニア時代から僕ら双子にとって遠い夢でした。最後のJOCが終わって満足な結果にならなかったのが悔しく、自選難度の選手を目指そうと決めた時も、高校を卒業して福岡を発つ時も、「いつか二人で代表になれたらいいよな」と弟と話していました。
今回選ばれてものすごく嬉しかったのは言うまでもありません。弟は泣きながら電話を掛けてきました。家族は僕以上に喜んでくれましたし、チームの仲間達や友達はお祝いや激励のメッセージをくれました。また、今までお世話になった先輩方やコーチの方々から力強い応援の言葉をいただきました。
色々な人が僕らを応援してくれていると感じ、本当に嬉しく思いました。
10月に上海である世界大会では、応援してくれている皆様の期待に応えられるよう、たった二人で自主練していた福岡時代の僕らに胸を張れるように、全力で戦ってきます。
日本隊の応援、よろしくお願いします。
1998/10/17生 福岡県出身
所属:大阪府武術太極拳連盟
学校:関西大学 商学部商学科3回生
主な競技成績:
■ 2019年第36回全日本武術太極拳選手権大会
男子自選難度長拳長器械1位
■ 2016年第24回JOCジュニアオリンピックカップ
武術太極拳大会 男子第三套路長拳4位
どうもこんにちは。自選難度の長拳をしています。三船仁です。若輩の自分が書けることは多くありませんが、福岡からの自分の経歴と、武術のコーチングに対する考えを、アップしたいと思います。
地方からの自選難度選手に
親が先生ということもあり、小さい頃から武術と関わってきた僕ですが、地元の福岡は武術が発展してるとは言い難かったため、実際に強化選手、そして自選難度という種目を知り、強く憧れて選手を目指すようになったのは、16歳からでした。
福岡の練習環境は整っておらず、練習仲間も数人で、毎日同じ量を練習していたのは双子の兄だけでした。だからこそ、その分量を増やし、フィジカル、基礎を徹底的に練習していきました。その中でも練習の質は落ちないように、常に「どうしたら上手くなるのか」を考えて、向上心を絶やさずに日々工夫していきました。
ジュニアの頃は大した成績を残せなかった僕ですが、自選難度長拳の刀術で二連覇を達成し、今年ついに、念願の世界選手権に日本代表として出場できるまでになりました。
武術太極拳の指導とスポーツ科学
自分は、選手を終えた後は地元の福岡に帰り、武術の指導者として父親の跡を継ぎたいと考えています。その上で、今現在学んでいるスポーツ科学、特にスポーツ医学とトレーニング学を踏まえたコーチングができるようになりたいと、日々大学で勉強しています。スポーツ医学では、スポーツ現場における怪我の知識を学んでいます。治療の実践的な知識はなくても、この方法なら怪我をしにくい、この方法でリハビリすれば早く武術に復帰できる、など怪我に対する理解があれば、その分練習メニューも、より質の高いものになっていくと思います。
トレーニング学では、主観的な運動感覚をモーションキャプチャや定量分析によって、客観的なデータに起こしていく勉強をしています。
自分は、武術の指導にこそ、データに基づいた明確なコーチングが必要なのではないかと考えています。なぜなら、武術のコツは個人の感覚によるところが大きいため、具体的なコーチングメソッドを確立するのが難しいからです。ただ、その中でも明確で論理的なコーチングができる動作も数多くあります。跳躍難度動作はそのひとつで、空中の軸のとり方、踏み込む角度、助走のフォームなどをデータや力学的観点から見て考察していけば、より正確な跳び方が定まっていくと思います。
武術のコーチングはまだ曖昧で感覚的な部分がほとんどですが、跳躍のように、科学的な観点から武術をみていくことで、より競技力の向上に繋がりやすいコーチングが確立される。そして、それが地方の練習の質を上げていくことに繋がると考えています。
自分はまだまだ未熟者ですが、東京の弐虎壱カンフークラブやトレーニングセンターで練習させてもらいつつ、大学でスポーツ科学を学んで、強化選手としても指導者としても、立派な武術家になれるよう日々努力を重ねていこうと思います。今年は自身のキャリア初の日本代表、キャリア初の国際大会です。今の自分にできることを出し切って、夢に大きく近づけるように全力を賭して頑張りたいと思っています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。これを読んだ皆様が、世界選手権で少しでも我々日本代表団を応援してくだされば幸いです。
1998/10/17生 福岡県出身
所属:福岡県武術太極拳連盟
学校:日本大学 スポーツ科学部2回生
主な競技成績:
■ 2019年第36回全日本武術太極拳選手権大会
男子自選難度長拳短器械1位
■ 2018年第35回全日本武術太極拳選手権大会
男子自選難度長拳短器械1位