「第10回アジアジュニア武術選手権大会(ブルネイ)」結果報告
金メダル4個・銀メダル2個・銅メダル4個、14人全員入賞と健闘!
アジア武術連盟(WFA)が主催し、8月16~24日(競技は8月19~23日)に「第10回アジアジュニア武術選手権大会」が開催された。
大会には、アジアの18の国・地域から延べ419人(套路競技は359人)の選手が集まり、会場のブルネイ国立屋内競技場では熱戦が繰り広げられた。
日本連盟では、ジュニア日本代表選手14人と監督・コーチ5人、帯同審判員1人の計20人を派遣した。また、アジア武術連盟技術委員会から、及川佳織委員が審判長として招聘された。本事業は、(公財)日本オリンピック委員会(JOC)選手強化NF事業助成を受けている。
競技は先月の速報でお伝えしたように、日本ジュニア武術隊は大きな活躍をみせ、金メダル4個、銀メダル2個、銅メダル4個の計10個のメダルを獲得し、全員が入賞、全体成績で7位と健闘した。
詳細な成績の一覧は下記に掲載する。
大会レポート 選手強化委員会
・開催地
今大会の開催地ブルネイは、飛行機で約6時間30分という比較的近い国で、日本との時差も1時間、気候も日本と同じくらいだったので、体調を崩す選手もおらず、総じて調整がしやすかった。滞在先のホテルは空港からバスで約5分の場所にあり、ホテルの下はショッピングモールで、その点も非常に便利だった。
・生活面での課題と収穫
今大会は2年ぶりのC組派遣となり、A組、B組、C組のフルエントリーであった。初出場の選手も多かったが、メダル獲得に大きく貢献し健闘した。日本隊全体としても好成績で終わったが、メダル獲得の裏では多くの課題も残った。
その一つは集団生活における問題点であった。国際大会に参加するということは、直前合宿から始まり、長い期間の団体生活を伴う。その間、見えてくることは普段の生活スタイルや行動である。スポーツ選手は国内や海外遠征などの機会があるので、普段から選手であることを意識し、円滑に団体行動ができるよう心がけることが望まれる。武術以外の面でも礼儀や生活力の成長が必要となる。その点においてまだまだ課題がみられた。がその一方、選手自身が自ら考え行動を起こし、様々な場面で選手同士が協力し、助け合うシーンが多く見られたことはとてもよかった。直前合宿以降、選手達に大きな成長が見られたことは非常にうれしいことであった。
・直前合宿
直前合宿では、套路の確認を重点的に行った。ジュニアの大会は規定套路にも関わらず、近年自選難度に影響されてか、規定套路を崩し、自分たちのやりやすい動きにアレンジして規定套路にない動きやリズムを取り入れる傾向があり、今回代表になった選手達にもそれらの傾向が見られた。しかしジュニアの国際大会では規格が重視され、大きく減点されてしまう。特にC組に関しては、跳躍動作が入っていない分、規格の減点が大きい。こういった点を踏まえ套路の確認を行い、修正できる部分は直し、しっかり調整することができた。
・大会での採点傾向
今大会では、止まった動作を減点するだけではなく、動作名称のすべての動作が減点対象となり、日本隊も普段減点されないような動作で減点をされた。これは今後の大会でも適用されていくと思われ、国内の大会でも厳しく見ていく必要がある。日本のみならず、近年各国でジュニアの規定套路が崩れており、それらを本来に戻す為か、今大会では近年まれな厳しい減点となった。
・今後の課題
今後の日本チームの課題としては、まずジュニアの套路は規定套路という事を再認識して訓練に取り組むことが必要である。今大会のように、動作名称にあるものすべてが減点対象になっている事実を踏まえ、もう一度套路を見直し、正確に動作を行うことに重点をおいて、訓練に臨むことが大切である。選手をよくするのも悪くするのも指導者次第だという責任を肝に銘じ、今後の更なるレベルアップを目指していきたい。
今年のJOC大会から新ルールが導入されたことを受け、今後も国際大会に対応できるよう対応を急ぎ、指導者も選手も今一度規定套路を見直す機会にする必要があると強く感じた。
最後に、日本から応援して下さった皆様、ブルネイまで来て日本チームを応援して下さったご父兄、関係者の皆様、選手育成にご尽力されているコーチ、選手を支えてくださるご家族、日本連盟の皆様に心より感謝申し上げます。
文化も宗教も違う異国の地で、現地ボランティアさんを始め、沢山の人達との出会いを通して、様々な事に触れ合える経験は、子供達にとって貴重な財産になっていると実感しています。これからも武術を通じて、人としても成長し、様々な経験が出来る様、監督、コーチ一同選手育成に努めていきたいと思います。選手の今後のさらなる奮闘を期待します。
日本代表選手成績一覧
No | 年齢区分 | 性 別 | 種 目 | 氏 名 | 所属連盟 | 出場種目と成績 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | A組 | 男 | 長拳 | 鎌田慎ノ介 | 北海道 | 長拳6位、剣術4位、槍術1位 |
2 | 太極拳 | 香取 尚弥 | 神奈川 | 太極拳8位、太極剣4位 | ||
3 | 南拳 | 松村龍之介 | 東京 | 南拳10位、南刀8位、南棍8位 | ||
4 | 女 | 長拳 | 中村 里香 | 千葉 | 長拳12位、刀術6位、棍術3位 | |
5 | 長拳 | 古川 萌華 | 岩手 | 長拳14位、剣術5位、槍術6位 | ||
6 | 太極拳 | 磯野 水響 | 千葉 | 太極拳1位、太極剣4位 | ||
7 | B組 | 男 | 長拳 | 中田 琉月 | 大阪 | 長拳8位、刀術6位、棍術8位 |
8 | 長拳 | 安良城基睦 | 大阪 | 長拳6位、剣術1位、槍術3位 | ||
9 | 女 | 長拳 | 森 香樹 | 東京 | 長拳2位、剣術3位、槍術1位 | |
10 | 長拳 | 高谷 琴美 | 大阪 | 長拳9位、剣術7位、槍術4位 | ||
11 | C組 | 男 | 長拳 | 藤本 大馳 | 兵庫 | 長拳19位、棍術4位 |
12 | 長拳 | 上山 颯真 | 兵庫 | 長拳13位、槍術2位 | ||
13 | 女 | 長拳 | 泉 小雪 | 兵庫 | 長拳3位、槍術4位 | |
14 | 長拳 | 清水 恵理 | 埼玉 | 長拳4位、剣術4位 | ||
15 | 役員・コーチ | 李 自力 | 選手強化委員会 強化コーチ/監督 | |||
16 | 神庭 裕里 | 同 ジュニアヘッドコーチ | ||||
17 | 丹井 均 | 同 強化コーチ | ||||
18 | 前東 篤子 | 同 副委員長 | ||||
19 | 孔 祥東 | 同 委員長 | ||||
20 | 帯同審判員 | 王 輝 | 国際審判員 | |||
21 | 審判長 | 及川 佳織 | アジア武術連盟技術委員会委員 |
参加国・地域別 獲得メダル数(套路種目)
順位 | 国・地域名 | 金 | 銀 | 銅 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 中国 | 12 | 12 | ||
2 | 中国マカオ | 7 | 8 | 3 | 18 |
3 | マレーシア | 6 | 9 | 5 | 20 |
4 | シンガポール | 5 | 7 | 8 | 20 |
5 | ベトナム | 5 | 2 | 1 | 8 |
6 | 中国香港 | 4 | 10 | 5 | 19 |
7 | 日本 | 4 | 2 | 4 | 10 |
8 | ブルネイ | 4 | 2 | 1 | 7 |
9 | 中華台北 | 3 | 6 | 5 | 14 |
10 | インドネシア | 2 | 3 | 6 | 11 |
11 | 韓国 | 2 | 1 | 2 | 5 |
12 | イラン | 1 | 4 | 7 | 12 |
13 | フィリピン | 1 | 2 | 1 | 4 |
14 | インド | 1 | 1 | ||
15 | カザフスタン | 1 | 1 | ||
合計 | 56 | 56 | 50 | 162 |