「第14回世界武術選手権大会」(ロシア・カザン)金1・銀2・銅5を獲得!

2017年9月29日~10月3日まで、50カ国・地域から延べ886人の選手が参加


国際武術連盟(IWUF)が主催し,ロシア武術連盟主管による「第14回世界武術選手権大会」が9月29(金)~10月3日(火)まで,ロシア・カザンのジムナスティックス・パレスで開催され,50カ国・地域から延べ886人の選手が参加し,世界最高峰の戦いをみせた。

日本連盟は套路競技に男子4人女子4人計8人の選手と監督・コーチ計4人,帯同審判員として竹中保仁審判員1人の計13人を派遣した。

太極拳種目での金メダルは10年ぶりの快挙

日本武術隊は,1日目に女子太極剣で齋藤志保選手が銅メダルを獲得。男女長拳では別當響選手が5位,山口啓子選手が4位,国際大会初出場となった池内理紗選手も健闘したが,惜しくもメダルを逃した。2日目には女子槍術で山口啓子選手が銅メダルを獲得した。大会3日目は,齋藤志保選手が女子太極拳で再び銅メダルを獲得,長拳を棄権して臨んだ大川智矢選手は男子剣術で6位となった。4日目には,山口啓子選手が槍術の銅メダルに続いて女子剣術では途中怪我をしながらも渾身の演武で銀メダルを獲得した。また,男子太極拳で荒谷友碩選手が,女子刀術で池内理紗選手がそれぞれ銅メダルを獲得,男子棍術の別當響選手は4位,女子南刀の阪みさき選手は6位と健闘をみせた。

大会最終日には,毛利亮太選手が男子南刀で5位と健闘し,池内理紗選手は女子棍術で銀メダルを獲得した。そして男子太極剣では,荒谷友碩選手が第9回大会の関屋賢大選手から実に10年ぶりとなる金メダルを手にした。

今回出場した8選手は全員がいずれかの種目で入賞し,来年度のW杯への出場権を手にした(成績表参照)。

本事業は,(公財)日本オリンピック委員会(JOC)選手強化NF事業助成を受けている。

国際武術連盟諸会議に出席

大会期間中に国際武術連盟(IWUF)の理事会および総会等の各種国際会議が開かれ,日本連盟からは村岡久平会長の代理として岡﨑温副会長と上り浜誠一・国際交流委員会副委員長が出席した。会議詳細はこちらのページ

第14回世界武術選手権大会 参加レポート

孫 建明 監督

今回の大会には,50以上の国から200人以上の選手が套路競技に出場した。前回の第13回インドネシア大会に出場したベテラン選手が引退した後の,新しい体制での大会であり,成績としてはよく頑張った。プロの国が多い中でアマチュアとしてよく頑張っている事を評価したい。

外国の選手たちの身体能力が非常に上がって,迫力ある表現,パワーを実感させられた。韓国やインドネシアもプロとして身体能力を上げて成績も出てきている。そんな中で日本の選手は,全体的な安定感と基本がしっかりしている逆の特徴がはっきりした。

初日の女子長拳で,1位:中国選手,2位:元中国の選手,3位:元中国の選手,4位:山口選手の順位が,アマチュアとしての頑張りを表している。山口選手は剣の演技途中で怪我をしたが,最後までやり切ってメダルの評価を得た。齋藤選手は2種目でメダルを獲得し好評価をもらえた事で,内田選手の引退後,本人にとって大きな一歩を踏み出せた。荒谷選手は安定感が出てきて,大会でも練習の通りに実力が発揮できた結果,金メダルを獲得。今後につながる大きな自信になった。池内選手は女子の刀,棍で久し振りのメダルを獲得した。初出場ながらミスがなかった事を評価したい。南拳種目では世界のレベルにまだ追いついていない事が見えるが,毛利選手はどんどん差を縮めてきている。これからも頑張ってもらいたい。別當選手は長拳,棍で高い点数が出てそれなりの評価を得たが,メダルに届くにはまだまだ努力が必要。大川選手は怪我をして注射しながらの出場。実力が発揮されたとは言い難い結果となったが,大きなミスなくまとめた事は評価したい。

今後も日本のレベルが急に上がるとは思えない。基本技術と身体能力を上げ続ける事が重要。これからの世代を育てる必要を感じている。

左から,大川智矢,毛利亮太,別當響,荒谷友碩,山口啓子,池内理紗,齋藤志保,阪みさきの各選手の演武

孔 祥東コーチ

孫監督と全く同感。日本のレベルは上がっているが,世界中のレベルも上がっていることを痛感した。その中で,80人近くも出場した男子長拳で日本人が上位に入った事は評価したい。今回出場した日本の選手は全員が複数種目で入賞し,来年開催予定のワールドカップの出場権を得た。アジア競技大会,ワールドカップ大会に向けて,これからもぜひ頑張ってもらいたい。

陳 静コーチ

十何年ぶりに国際大会に参加した。難度競技になってから外国選手の身体能力が上がったが,アジアだけでなく世界中のレベルが上がった。日本はプロではないのに,それなりの実力がある事を実感して嬉しく思った。日本のこのままの特徴を活かして練習を続け,競争力を上げていってもらいたい。来年が楽しみだと思う。

前東 篤子コーチ

今回の特筆点は,A組の減点が非常に多く,またC組の難度判定もこれまでにない大変厳しいものであった。A組の規格減点やC組で角度の未認定があれば,B組(演技レベル)点がいくら高くても減点分を補う事はできない。多くの外国選手が減点で得点を下げる中,日本国内の大会でA組C組を厳しく採点される日本チームにとってはそれが強みとなった大会であった。

もう一点印象的だったのは,多くの国の選手が720°(2回転)にチャレンジしていた。C難度に取り組み,かなりの完成度になっていた。日本の選手はまだC難度を安定してこなすレベルにはないが,これまでチームの訓練テーマにしてきた難度の安定性はかなりの確率で改善されてきている。規格のレベルを継続して維持する事,難度の精度を上げる事を目標に,少しずつでもレベルを上げて世界に挑戦して行きたい。

左から山口啓子選手,荒谷友碩選手,池内理紗選手

大会も終わり笑顔をみせる日本代表選手団一行

参加国・地域別 獲得メダル数(套路種目)

順位 国・地域名 合計
1 中国 8     8
2 中国香港 5 3 3 11
3 インドネシア 2 4 1 7
3 韓国 2 4 1 7
5 マレーシア 2 3 3 8
6 ベトナム 1 3 1 5
7 日本 1 2 5 8
8 中国マカオ 1 2 3 6
9 中華台北 1 1 2 4
10 ロシア 1 1 1 3
11 イラン 1   2 3
12 フランス 1     1
13 ウクライナ   2 1 3
14 アメリカ   1   1
15 ドイツ     1 1
15 シンガポール     1 1
15 トルコ     1 1
合計 26 26 26 78

 

日本代表選手団と成績一覧

種目 性別 氏名 所属 出身 出場種目と成績
1 南拳 毛利 亮太 大阪府 福岡県
南拳8位,南刀5位,南棍13位
2 長拳 大川 智矢 東京都 北海道
長拳(棄権),剣術6位,槍術6位
3 別當  響 大阪府 大阪府
長拳5位,刀術18位,棍術4位
4 太極拳 荒谷 友碩 千葉県 千葉県
太極拳3位,太極剣1位
5 南拳 阪 みさき 大阪府 大阪府
南拳8位,南刀6位,南棍8位
6 長拳 池内 理紗 埼玉県 埼玉県
長拳11位,刀術3位,棍術2位
7 山口 啓子 東京都 大阪府
長拳4位,剣術2位,槍術3位
8 太極拳 齋藤 志保 岩手県 岩手県
太極拳3位,太極剣3位
9 監督 孫  建明
選手強化委員会ヘッドコーチ
10 コーチ 前東 篤子
同委員会副委員長
11 孔  祥東
同委員会強化コーチ
12 陳   静
同委員会強化コーチ
13 帯同審判員 竹中 保仁
審判委員会委員