震災被災地の各県連盟からの報告③

震災被災地の各県連盟からの報告③

東日本大震災で被災された地域の県連盟から被災地・避難所などの状況を寄せていただいた。(2011年6月1日現在)

【掲載:2011年06月15日】

山形県連盟

──米沢市内の避難所で「太極拳ゆったり体操」ボランティア,3月23日~5月6日──

福島原発事故による福島県からの避難者が多数生活されていた山形県米沢市の避難所,米沢市営体育館で3月23日から5月6日まで,火曜日を除く毎日午後4時から5時の1時間,「太極拳ゆったり体操」を実施しました。

避難されているみなさんが5分でもいいから,身体を動かして気分転換をしてくれたら,という思いで始めました。当時,避難所には1000人近い避難住民の方がおられ,その中に飛び込んでいくのは勇気のいることでしたが,ある時ふと耳にした「被災していないまわりの人はいつもどおり元気で明るくいてほしい。そうすれば私たちも元気になれるから」という被災者の方のメッセージが,後押ししてくれました。

まずは,養生功と喜多方市の「太極拳ゆったり体操」を組み合わせた内容にしました。身体を動かした後には水分補給と称して「ティータイム」を設けて麦茶やコーヒーを飲みながら,話をしたり,聞いたりの「憩いの場」にしたところ毎日,10人ほどが参加されました。県連盟の仲間も順番に指導に参加してくれました。

私もみなさんと一緒に身体を動かすことで逆に励まされたり,支えあったりして生きている喜びを感じ,今できることをみつけて生きていこうと思います。太極拳をやり続けて本当によかったと思っています。

「太極拳ゆったり体操」に参加された方のうち,米沢を2次避難所に選んでくれた方が何人かおられますが,これをきかっけに地域ともっと触れ合っていただこうと,避難されている方を対象に,山形県連盟では太極拳教室に会費免除での受け入れを始めました。

みんなで支えあって困難を乗り越えていき たいと思います。

2011年5月27日
夏井幸子・山形県連盟選手強化委員長

 

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編集部注:山形県内の避難所は6月3日現在,13カ所が開設され,305人の避難者が生活する。うち福島県から285人,宮城県から20人。上記体育館などの米沢市の公共施設を利用した1次避難所は5月の連休後に閉鎖され,現在は2次避難所としてホテル・旅館などでほとんどの避難者が生活している(山形県広域支援対策本部避難者支援班)。

「太極拳ゆったり体操」を指導する。
避難所・米 沢市営体育館で

タオルですぐに作れる手芸品「負けないゾウ」 を手に。避難住民のみなさん。米沢市営体育館

茨城県連盟

──南相馬市から取手市に避難されている皆さんへの慰問─太極拳とそば打ち──

取手市の総合型スポーツクラブで太極拳普及活動を行っている仲間が,4月30日,福島県南相馬市から取手市内の避難所に避難されているみなさんを元気づけようと,太極拳と蕎麦打ちをコラボレーションして慰問活動を 実施したという報告がありましたので紹介します。

2011年5月26日
塚原加代子・茨城県連盟事務局長

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福島原発事故のため福島県南相馬市から取手市に避難されている約100人の皆さんの避難所生活も長くなるにつれて,心身ともにストレスと疲れが蓄積していることを心配して,心と身体のケアのお役に立ちたいと,4月30日(土)取手セントラルクラブが主催して「太極拳と手打ちそばによる慰問」を行いました。そのうち,太極拳を取手セントラルクラブ太極拳事業部(広木会長)と藤代太極拳協会(大沼会長),羽中公園太極拳が協力して担当しました。会場は取手競輪場選手宿舎。

避難されているみなさんの運動不足解消のため,練功18法や養生功を体験してもらいました。参加した男性から「やってみて,自分がいかに運動不足であったかがよくわかった。やって良かった」,「首回りや肩のあたりが軽くなりすっきりした」などの感想をいただきました。

まず養生功で身体をほぐす。
避難所の取手競輪 場選手宿舎構内

扇の使い方を習う小学生。取手市避難所で

父と祖母の三人で避難中の小学4年生の男子生徒は好奇心旺盛で扇や太極剣の扱い方を 教えてもらったり剣の型を構えたりなど元気いっぱいな様子でまわりの人々の心を和ませてくれました。

柏手打ちそば愛好会による手打ちそばの実演には80人近くが参加,天ぷらそばを昼食にひさしぶりにおしゃべりに花が咲いたようでした。

南相馬市から同行してきている市職員は「地震で大変怖い思いをした後,原発事故で故郷を離れることになり,心に痛手を負っている中で,このような温かい催しをしていただき心から感謝しています」と話していました。慰問会の後日,5月2日に取手市役所を訪問した際,藤井信吾市長から「太極拳で身体を動かし,手打ちそばを食べていただく催しをセットにしたことは良かった。避難者の皆さんにたいへん好評だったと聞いています。協力ありがとうございました」と感謝されました。

避難所生活では食事の時もそのほかの時もほとんど周りの人と会話をかわすことがないようです。今後も長引く避難生活を考えると,コミュニティーの成立と運動不足の解消などが何よりも必要なのではないかと感じました。

今回は太極拳体験と表演に20人,手打ちそばの実演には80人近くが参加しました。これからも必要とされる協力をしていきたいと思います。

2011年5月16日
藤代太極拳協会・山王太極拳 長嶋信二郎

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編集部注:上記避難所は5月31日に閉鎖。取手市によると,南相馬市から受け入れが始まった3月19日当時は128人,最終的には9世帯28人が生活していた。