「第8回アジア武術選手権大会・ホーチミン市」宮岡が堂々の金メダルを獲得!!銀3・銅2
8月21~25日 21カ国・地域から400人が参加
宮岡が堂々の金メダルを獲得!!
銀3(市来崎,宮岡,山口),銅2(市来崎,下起)
【掲載:2012年09月15日】
アジア武術連盟(WFA)が主催して2年に1回開催される「アジア武術選手権大会」の「第8回大会」が8月21~25日にベトナム・ホーチミン市の「プートー体育館」で開催された。套路競技11種目男女計22種目と散打競技女子6階級,男子10階級に,アジア21カ国・地域から合計400人の選手・役員が参加した。
日本連盟は套路競技に男女各6人,計12人の選手と監督・コーチ4人を派遣した。
男子: | ①関屋賢大=太極拳・太極剣(大阪府連盟), ②吉田慎之佑=太極拳・太極剣(東京都連盟), ③中田光紀=南拳・南刀・南棍(東京都連盟), ④市来崎大祐=長拳・刀術・棍術(東京都連盟), ⑤岸 啓介=長拳・刀術・棍術(大阪府連盟), ⑥下起悦郎=長拳・剣術・槍術(愛知県連盟) |
女子: | ①宮岡 愛=太極拳・太極剣(神奈川県連盟), ②佐藤直子=太極拳・太極剣(神奈川県連盟), ③大塚美鈴=太極拳・太極剣(東京都連盟), ④小島恵梨香=南拳・南刀・南棍(滋賀県連盟), ⑤阪みさき=南拳・南刀・南棍(大阪府連盟), ⑥山口啓子=長拳・剣術・槍術(東京都連盟) |
監 督= | 孫 建明(選手強化委員会ヘッドコーチ) |
コーチ= | 前東篤子(選手強化委員会副委員長),李自力(同委員会強化コーチ),丹井均(同委員会強化コーチ) |
◎アジアの精鋭が集うトップレベルの競技:
「アジア武術選手権大会」は,1987年に第1回大会を日本連盟が主管して横浜市で開催した。以後は偶数年に開催することになったが,「アジアオリンピック評議会(OCA)」が主催する「アジア競技大会」で武術太極拳が正式種目となった1990年以降は,「アジア競技大会」が開催される年(1990年北京,1994年広島,1998年バンコク,2002年プサン,2006年ドーハ,2010年広州)を除いて,2年に1回「アジア武術選手権大会」が開催されている。
武術の発祥地中国と,中国と歴史的に深いつながりのある東アジア,東南アジアの各国・地域の精鋭が多数参加して競い合うこの大会では,套路競技のすべての種目が自選難度競技で行われ,世界でもトップクラス,高レベルの大会である。
日本代表の12人の選手は,過去数年間日本代表として実績を重ねたベテラン組と,新人組が集中的に強化訓練に取り組んで大会に備えた。
また,8月12~18日に中国・北京で直前調整合宿を行い,満を持して19日にホーチミンに入った。
◎1日目に市来崎が銀,2日目に銀1(宮岡),銅1(市来崎):
8月21日午後に大会開幕式が挙行され,続いて1日目競技としては,男子長拳の1種目(40人)のみが実施された。この種目に日本は岸,下起,市来崎の順で3人が出場した。3人とも,A組(動作規格),C組(難度動作)ともに減点が無く,満点の出来であった。
岸選手は今大会が国際大会初出場で,しかも最初の種目で出場順1番のくじをひいたが,ノーミスで落ち着いた演技を見せ,9. 61点5位を獲得し,見事にデビュー戦を飾った。今後が期待される。
市来崎選手は,力強い演技の9. 69点で,中国の長拳チャンピオンWang Xiに次いで2位銀を獲得し,日本チーム勢いをつけた。下起選手もノーミスの10位で,次の種目に期待をつないだ。
2日目には男子刀術で市来崎選手が3位銅を獲得,岸が4位につけた。
市来崎選手はこの数年来,国際大会で,中国やマカオ等の強豪選手に伍して,常に銀メダル,銅メダルを獲得して,トップ選手としての地位を確立してきた。今大会でも銀と銅各1を獲得して,十分に存在感を示した。今後ぜひとも,金メダル獲得を期待する。
午後に行われた女子太極剣は,宮岡選手が中国のYu Meng mengに次いで2位銀を獲得,佐藤選手は5位で健闘し,大塚選手は10位であった。
◎宮岡が単独で初の金メダル,山口が銀,下起が銅:
3日目の女子太極拳で,宮岡選手が宿敵のマレーシア選手(Chai Fong Ying), インドネシア選手(Lindswell),ベトナム選手(Tran Thi Minh Huyen)を破り,ついに念願の単独金メダルを獲得した。佐藤選手も4位で健闘した。
宮岡選手は2001年第1回アジアジュニア選手権(ハノイ)で国際大会にデビューして3位銅を獲得した。それ以来,世界選手権,アジア選手権,アジア競技大会(2006年ドーハ,2010年広州)等で常に2位銀または3位銅を獲得し,世界の舞台で実績を重ねてきた。 「2008年第7回アジア選手権大会」の太極剣の種目で,マレーシアのChai Fong Yingと同点1位で異例の複数金メダルとなり,インドネシアのLindswellが僅差で3位であった。
本誌の2010年12月号に「2010年広州アジア競技大会」での宮岡選手の戦評が次のように掲載されている。 「宮岡選手が,2種目ともノーミスの立派な演技で実力を発揮したことを大いに讃えたい。1位のマレーシア選手(Chai Fong Ying)とは,奇しくもドーハアジア大会(2006年)と同じ1,2位となった。両選手は,演技の風格,特徴が異なる実力者同士である。宮岡選手が今後ライバルに差をつける力を身につけることを期待したい。」
国際大会で金メダルを獲得するには,毎大会ごとにさまざまなハードルがあり,実力を備えていても運に恵まれないこともしばしばである。
宮岡選手は,国際大会の女子太極拳トップ選手として10年以上活躍してきたが,その裏で同選手が誰よりも真剣に,1日たりと休むことも無く練習を続け,精進を重ねてきたことは,コーチと選手仲間が認めているところである。たゆまぬ精進を重ね,今大会でついに強敵に追いつき,追い越した宮岡選手の精神力と情熱を心から讃えたい。次に,必ずや世界チャンピオンを獲得するまで,応援したい。
3日目は他に,女子槍術で山口選手が2位銀を,男子槍術で下起選手が3位銅を獲得した。二人の健闘に拍手を送りたい。
◎さらに上を目指して挑戦を:
過去の大会で実績のあるベテラン選手組のなかで,男子太極拳の関屋選手,男子南拳の中田選手などは,A組減点(動作の揺れ等)で入賞圏外となった。また,中田選手は南棍ではA組,C組ともにノーミスであったが,選手層が厚く,競争が激しい男子南拳種目では,ノーミスだけではメダルに届かず,7位に終わった。女子南拳の小島選手は過去の国際大会で常にメダルを獲得してきたが,今大会はケガからの回復が十分でな
く,実力を発揮できなかった。
今大会では,かつての強豪国であっても成績が伸び悩み,選手の交替時期を迎えている国があるなかで,有望な新人選手も多数見受けられた。
また,インド,ブルネイなどの武術新興国が着実に力をつけていることも軽視できない。
各チームの強化体制や選手層も一様ではないが,いずれにしても競争の激化が進んでいる。高度な競争のなかでは,ノーミスが大前提で,そのうえでB組演技点(表現点)でのメダル争いとなる。この大会に至るまで精進を重ねてきた日本代表チームの各選手の努力を讃えるとともに,さらに技を極めて挑戦することを期待したい。
日本チームが最善の努力を払って大会に臨み,立派な成績を挙げたことに対して,監督,コーチをはじめ関係各位に感謝したい。
◎大会役員を派遣:
大会には,村岡久平日本連盟副会長がアジア武術連盟(WFA)専務理事として,また,岡﨑温日本連盟事務総長がWFA事務局主任として参加し,WFAの諸会議を主宰した。
また,中村剛国際審判員がチーム帯同審判員として審判業務を担当し,川崎雅雄理事が大会副総審判長を,石原泰彦理事が大会仲裁委員会副主任を担当した。
●参加国・地域 メダル獲得数(散打種目を除く)
国・地域名 | 金 | 銀 | 銅 | 計 | |
1 | 中国 | 9 | 0 | 0 | 9 |
2 | ベトナム | 3 | 5 | 3 | 11 |
3 | 中国香港 | 3 | 3 | 2 | 8 |
4 | マレーシア | 2 | 6 | 2 | 10 |
5 | 中国マカオ | 2 | 2 | 5 | 9 |
6 | 日 本 | 1 | 3 | 2 | 6 |
7 | 韓 国 | 1 | 1 | 1 | 3 |
8 | ブルネイ | 1 | 0 | 0 | 1 |
9 | イラン | 0 | 1 | 2 | 3 |
10 | 中国台北 | 0 | 1 | 0 | 1 |
11 | インドネシア | 0 | 0 | 2 | 2 |
11 | シンガポール | 0 | 0 | 2 | 2 |
13 | フィリピン | 0 | 0 | 1 | 1 |
13 | ミャンマー | 0 | 0 | 1 | 1 |
計 | 22 | 22 | 23 | 67 |
日本代表選手成績一覧
No. | 種 目 | 氏 名 | 所属団体 | 成績順位 |
1 | 太極拳 | 関屋 賢大 | 大阪府連盟 |
太極拳7位・太極剣16位
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2 | 太極拳 | 吉田慎之佑 | 東京都連盟 |
太極拳11位・太極剣13位
|
3 | 南 拳 | 中田 光紀 | 東京都連盟 |
南拳14位・南刀9位・南棍7位
|
4 | 長 拳 | 市来崎大祐 | 東京都連盟 |
長拳2位(銀)・刀術3位(銅)・棍術14位
|
5 | 長 拳 | 岸 啓介 | 大阪府連盟 |
長拳5位・刀術4位・棍術5位
|
6 | 長 拳 | 下起 悦郎 | 愛知県連盟 |
長拳10位・剣術6位・槍術3位(銅)
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7 | 太極拳 | 宮岡 愛 | 神奈川県連盟 |
太極拳1位(金)・太極剣2位(銀)
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8 | 太極拳 | 佐藤 直子 | 神奈川県連盟 |
太極拳4位・太極剣5位
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9 | 太極拳 | 大塚 美鈴 | 東京都連盟 |
太極拳10位・太極剣10位
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10 | 南 拳 | 小島恵梨香 | 滋賀県連盟 |
南拳4位・南刀10位・南棍10位
|
11 | 南 拳 | 阪 みさき | 大阪府連盟 |
南拳12位・南刀13位・南棍9位
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12 | 長 拳 | 山口 啓子 | 東京都連盟 |
長拳7位・剣術4位・槍術2位(銀)
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