「第1回武術套路ワールドカップ大会」(中国・福州市)金2,銀2,銅4を奪取!
国際武術連盟(IWUF)主催による「第1回武術套路ワールドカップ大会」が,11月18~20日に中国福建省・福州市の「福建省体育館」で開催された。
本大会は昨年度の「第13回世界武術選手権大会」(インドネシア)で8位以内の入賞者(人数に不足がある場合は国際武術連盟が指定した選手)に参加資格が与えられた新設の大会である。世界選手権の種目のうち,「第三套路」「伝統種目」を除いた種目に,23カ国から81人が参加した。
日本からは選手6人と監督・コーチ2人,指名審判員1人が派遣された。大会前の11月10~15日に会場都市である福州市で直前合宿を行い,大会に臨んだ。
日本代表選手の成績は,金メダル2個,銀メダル2個,銅メダル4個という見事な成果を収めた。各選手の成績は表のとおり。
本大会は,初めて3位以上に副賞で賞金が与えられた。この賞金は,日本連盟選手強化助成の一部として50%を日本連盟が受け取り,50%は選手個人の取得とした。
本大会は,隔年で開催される世界選手権大会で入賞した選手を対象に実施することになっている。
監督レポート:孫建明日本連盟選手強化ヘッドコーチ
今大会に臨むにあたって,現地の福建省武術チームで事前合宿を行った。現地では体育学校の方,コーチ,選手たちが総出で日本チームを応援してくれた。最高の環境で,海外強化合宿等でお世話になっているコーチたちから直接,きめ細かい指導を受けた。福建省チームは層も厚く,熱気のある中での訓練が,日本チームの士気を盛り上げた。また同時期に合宿を行っていた中国代表チームとも共に練習することができ,大会前に非常に良い緊張感で切磋琢磨しながら過ごすことができた。
また福建省チームには大会期間中も大会ホテルではなく,会場に近い宿舎を開放していただき,朝・夜というイレギュラーな大会日程にも対応できるよう配慮していただいた。
大会前に合宿を行ってから臨むことには大きな意味がある。日本の環境はアマチュア競技であるため,選手は学校や仕事の傍ら訓練をするので,身体・精神の管理が非常に難しい状態である。実際に現地の生活に慣れつつ,1週間で徐々に身体を慣らしていくことは,疲労度や精神面にとっても余裕を持てたと言える。今回の合宿の成果は,大会成績を見ても明らかだろう。大会の内容は,世界選手権上位8人ということで,非常にレベルの高い争いとなった。各種目とも人数が少ないため,プレッシャーもかかり普段ミスしないような強豪国の選手たちもミスが相次いだ。普段の訓練で,自信をもって本番に臨めるところまでになれた選手が成績を残したように思える。
また,今大会はこれまでの国際大会に比べて採点の基準がより厳しく,特に難度動作の足の高さや助走の歩数,器械の持ち方などでの減点が目立った。今後もオリンピック種目化に向けて減点項目の追加なども検討されるだろう。
日本チームは今回帯同するコーチは少なかったが,各選手が意識を持って出場時間など計算して本番に臨むことができた。
今後の日本選手の課題としては,今年9月に開催されたアジア選手権でも課題に挙げられた「難度動作」と「身体能力」である。
他国に比べ,日本選手の跳躍力や身体の強度は見劣りする。アマチュアである日本選手の成長曲線は24,25歳を超えた頃に安定して上向きになってくる傾向にある。コーチが完全に管理できる体制ではないのが現状なので,練習回数が少ない中で各選手が自分で時間を見つけて筋力トレーニングをするなど,工夫して行っていくことが必要だ。コーチもさらに勉強を深め,選手とよりコミュニケーションをとり,力を合わせられるようにしたい。コートの上に立つのは選手一人であるが,そのプレッシャーに負けない練習量で得た自信と,周囲への感謝を持って精進していきたい。
参加国・地域別 獲得メダル数
順位 | 国・地域名 | 金 | 銀 | 銅 | 合計 |
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1 | 中国 | 7 | 7 | ||
2 | 中国香港 | 5 | 3 | 1 | 9 |
3 | インドネシア | 4 | 1 | 2 | 7 |
4 | 日本 | 2 | 2 | 4 | 8 |
5 | 中国マカオ | 2 | 2 | 2 | 6 |
6 | マレーシア | 1 | 5 | 2 | 8 |
7 | 中華台北 | 1 | 4 | 5 | |
8 | ロシア | 2 | 1 | 3 | |
9 | イラン | 1 | 3 | 4 | |
10 | ベトナム | 1 | 2 | 3 | |
11 | ウクライナ | 1 | 1 | ||
12 | イタリア | 2 | 2 | ||
13 | フィリピン | 1 | 1 | ||
14 | インドネシア | 1 | 1 | ||
15 | ウズベキスタン | 1 | 1 | ||
合計 | 22 | 22 | 22 | 66 |
日本代表選手成績一覧
No. | 種目 | 性別 | 氏 名 | 所属団体 | 出場種目と成績順位 |
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1 | 長 拳 | 男 | 大川 智矢 | 東京都連盟 |
長拳5位・剣術3位(銅)・槍術1位(金)
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2 | 女 | 本多 彩夏 | 東京都連盟 |
剣術8位・槍術2位(銀)
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3 | 南 拳 | 男 | 毛利 亮太 | 大阪府連盟 |
南拳4位
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4 | 女 | 小島恵梨香 | 滋賀県連盟 |
南拳3位(銅)・南刀2位(銀)・南棍3位(銅)
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5 | 太極拳 | 男 | 荒谷 友碩 | 千葉県連盟 |
太極拳3位(銅)・太極剣1位(金)
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6 | 女 | 齋藤 志保 | 岩手県連盟 |
太極拳6位・太極剣5位
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7 | 役員・コーチ | 孫 建明 |
選手強化委員会 ヘッドコーチ
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8 | 孔 祥東 |
同 コーチ
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9 | 指定審判員 | 竹中 保仁 |
審判委員会委員・国際審判員
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