「第29回ユニバーシアード競技大会・武術競技」(台湾・新竹市)

オリンピックに武術太極拳種目初採用!銅メダル2個獲得!


国際大学スポーツ連盟(FISU)が主催する「第29回ユニバーシアード競技大会」が8月19~30日の会期で開催され,19競技275種目が実施された。

今大会がユニバーシアード競技大会に初採用となった「武術競技」は,8月26~29日に台湾・新竹市にある「新竹県体育館」で行われた。

日本連盟からは,4人の代表選手と谷川大監督,孫建明コーチの計6人が日本オリンピック委員会(JOC)の派遣で参加した。また,国際武術連盟の指名で中村剛国際審判員が派遣された。

套路種目には,25ヵ国88人の選手が参加し,散打種目と合わせると29ヵ国144人の参加があった。日本選手の成績は,本多彩夏選手が女子長拳で銅メダルを獲得,女子剣術・槍術総合では4位であった。朝山義隆選手は男子南拳・南棍総合で銅メダルを獲得。男子太極拳・太極剣総合の種目に出場した村上僚選手は5位,男子長拳,男子刀術・棍術総合の2種目に出場した小松資選手はいずれも4位と各選手が健闘した。

日本武術隊は30日に実施された閉会式にも参加し,世界各国・各競技団体の選手との交流も深めた。

このような国際大会の場で武術太極拳の魅力をアピールしていくことが今後も大きな意味を持っていくであろう。

各選手の成績はページ下部の表のとおり。


孫建明ヘッドコーチと日本代表選手たち

監督レポート:谷川 大(選手強化委員会委員長)

武術太極拳競技は今回のユニバーシアードで初の種目採用となった。台湾は過去に数度開催地として立候補しており,今回の開催を勝ち取った。ユニバーシアード大会はオリンピックに次ぐ世界規模のスポーツ大会であり,その参加者の多くがその後オリンピックの代表として活躍していく。そのような意味からも各種目のレベルは大変高いものである。武術競技は各国の対応反応が今一つで,参加国もそれほど多くなかったが,参加選手の中にはすでに国際代表となっている者もあり,試合自体は大変充実したものであった。

国内選考会により代表となった4人の選手は実力を発揮し,良好な成績を残した。近年国際大会が近接した日程で実施されることも多くなり,代表選考はそれぞれの大会の特性を生かしてのものになっていくと思われる。競技日程は余裕のあるものだったが,空いている時間を有効に活用し,コンディショニングを行うのに苦労があったかとも思われる。今回は故障者が出て,大会の出場が不安視されたが,JOC本部のドクター,トレーナーの皆さんにコンディショニングの部分で大変お世話になった。出場時間に合わせて来場いただき,痛み止めを打って出場し,メダル獲得となったことも合わせ深く感謝したい。また今回の代表諸君にはこの経験を今後に生かし日本代表として活躍してもらいたい。

大会期間中は日本選手団・塚原光男団長に会場へ視察においでいただいた。団長はご子息と2代にわたり体操の日本代表としてオリンピックに出場し,活躍された方である。競技を参観しながらお話を伺ったのだが,武術が武術であると同時に採点芸術競技としての側面を持つことを認識することができた。同時に異なった競技からの視点に新しい発見があった。武術自体の特性を持ち続けながら,他競技との交流ということにも大きなヒントをいただいた。

到着時の空港では思わぬ再会があった。昨年8月に台湾・桃園市で開催されたアジア武術選手権で現地ボランティアとして日本チームを担当された方が,今回も日本を担当されたのである。大変日本語の堪能な方で,日本選手団の担当として,団長付きをされるほどの実力をお持ちである。昨年の大会に参加した選手コーチにはこの再会は感動的なものであったようだ。今回の大会を通じて,今後は日本語・中国語だけでなく英語またはそれ以外の言語を習得していることが,国際的に活躍するためには必要と感じた。

大学生大会への参加はオリンピックを目指すうえで重要な意味を持つ。来年は世界大学生武術選手権の開催が予定されている。今後大学在学中の選手には一つのチャンスが増えていくわけだが,単なる国際の一大会ではなく,武術全体の動向に重要な意味を持つものであると認識していただきたい。次回のユニバーシアードは2年後,イタリア・ナポリで開催。武術が再び種目として世界に発信できることを望む。

「第29回ユニバーシアード競技大会・武術競技」日本代表選手団名簿

No. 性 別 氏 名 学校名 所 属 出場種目と成績
1 男子 村上  僚 中央大学 東京都連盟 太極拳・太極剣総合5位
2 朝山 義隆 立命館大学 大阪府連盟 南拳・南棍総合3位
3 小松  資 中央大学 埼玉県連盟 長拳4位
刀術・棍術総合4位
4 女子 本多 彩夏 法政大学 東京都連盟 長拳3位
剣術・槍術総合4位
5 監督・
コーチ
谷川  大 選手強化委員会 委員長
6 孫  建明 選手強化委員会 ヘッドコーチ
7 審判 中村  剛 審判委員会委員・国際審判員



「男子南拳」銅メダルを獲得した朝山義隆選手


「女子長拳」銅メダルを獲得した本多彩夏選手

閉会式に参加する左から,村上僚,朝山義隆,本多彩夏,小松資の各選手

演武写真と本多選手の表彰の写真は,国際武術連盟(IWUF),Chen WS氏の提供