【大会報告】「第2回武術套路ワールドカップ大会」(ミャンマー・ヤンゴン)

選手7人が出場し、銀メダル3個、銅メダル1個を獲得

素晴らしい演武をみせた日本武術隊の選手たち
素晴らしい演武をみせた日本武術隊の選手たち

国際武術連盟(IWUF)主催による「第2回武術套路ワールドカップ大会」が、昨年11月17日(土)~18日(日)にミャンマー・ヤンゴンの国立室内競技場で開催された。

本大会は2017年度の「第14回世界武術選手権大会(ロシア・カザン)」で8位以内の入賞者(人数に不足がある場合は国際武術連盟が指定した選手)に参加資格が与えられた世界最高レベルの大会で、21の国と地域から選ばれた80人の選手が参加した。

日本からは選手7人(別當響選手はケガのため欠場)と監督・コーチ2人、指名審判員1人が派遣された。日本武術隊は、大会前の11月8日から福州市で直前合宿を行い、14日に開催地のミャンマーに到着して大会に臨んだ。

女子太極拳で銀メダルを獲得した齋藤志保選手
女子太極拳で銀メダルを獲得した齋藤志保選手

世界各国のトップ選手が集まる中で、日本隊は銀メダル3個、銅メダル1個を獲得した(各選手の成績は表のとおり)。また、3位以上の選手には副賞で賞金が与えられた。

大会後には、各国の参加者が互いの健闘を讃えあって交流を深めた。

また、大会の映像はIWUF公式YouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/user/iwufwushu)でライブ配信され、多くの声援をいただいたことに感謝したい。配信された大会映像はいつでも見ることができるので、ぜひご覧いただきたい。

男子剣術・槍術で銀メダルを2個獲得した大川智矢選手(右) と女子槍術で銅メダルを獲得した山口啓子選手(左)
男子剣術・槍術で銀メダルを2個獲得した大川智矢選手(右) と女子槍術で銅メダルを獲得した山口啓子選手(左)

第3回ワールドカップは2020年に東京で開催

IWUFの第35回執行委員会会議にて、「第3回武術套路ワールドカップ大会」の東京での開催が決定しているため、日本連盟では視察として近藤重和事業委員会委員長らを派遣した。

閉幕式では、ミャンマー武術連盟から、日本連盟にIWUFの旗が引き継がれ、日本隊の集体で大会のフィナーレを飾った。

2020年東京W杯開催に向けて日本連盟も着々と準備を進めている。

左から、池内理紗、山口啓子、阪みさき、齋藤志保の女子 選手、孫建明監督、荒谷友碩、毛利亮太、大川智矢の男子 選手、孔祥東コーチ
左から、池内理紗、山口啓子、阪みさき、齋藤志保の女子 選手、孫建明監督、荒谷友碩、毛利亮太、大川智矢の男子 選手、孔祥東コーチ
日本代表選手が集体でフィナーレを飾る
日本代表選手が集体でフィナーレを飾る
日本代表選手が集体でフィナーレを飾るIWUFの旗を引き継ぐ近藤重和事業委員会委員長
日本代表選手が集体でフィナーレを飾るIWUFの旗を引き継ぐ近藤重和事業委員会委員長

監督レポート:孫建明・日本連盟選手強化委員会ヘッドコーチ

2018年は夏の全日本選手権から、世界大学選手権、アジア競技大会、そして最後の大きな国際大会であるワールドカップと長期間にわたって大会が続いた。

他国のチームでは、2017年の世界選手権、2018年のアジア競技大会が終わったあと、上位にいたベテラン選手たちが引退し、全体的には年齢層の低い選手が多い印象であった。

日本チームは、前大会と成績だけを比較すると思わしくなかった。そこには、やはり長きにわたって日本チームの課題となっている、アマチュア体制とプロ体制の差があるように感じた。

プロ選手は毎日の練習や生活が厳格に管理され、安定して練習に専念できる環境が用意されている。それに対してアマチュア選手は学生や社会人がほとんどで、練習に割く時間がプロに比べてとても少ない。

前大会同様に、今大会も福建省武術チームで事前合宿を行い、最高の環境で、いつもお世話になっているコーチたちから直接きめ細かい指導を受け、大会まで非常に良い緊張感で過ごすことができた。福建隊とコーチの皆さまに感謝申し上げる。

しかしながら、日本チームは普段から段階的な練習ができないため、怪我が多くなったり、調子がつかめず、いざプロの練習の中に入ると調子を崩してしまう選手も見受けられる。また、大きな大会では、練習通りの実力を出せず、ミスが目立つ選手も見受けられるため、メンタル面のトレーニングも必要である。

練習においては、難度をまず完成させ、ミスのない演武をすること。その後でリズムやスピード、動作や套路の表現力に対しての理解を深めていくことが大事となる。そして、常に新しい自分を発見し、何を見せたいか、何を表現したいか、自分の中でしっかり明確にしておくことも大切である。

最近の傾向として、套路の流れや動作が各国同じようになってきたように感じる。誰かの套路を模範とすることはいいが、しっかりと自分のものにしていかなければならない。自分の個性を発見することが大事で、同じ動作をして、同じレベルの演武をしては、抜きん出て勝つことはできない。

2020年の東京を見据え、現状のままで挑戦するのは難しいと感じた。どのようにして自分が立ち上がるかが大事で、過去のことを気にせず、ゼロからという気持ちでスタートしていく。

写真は、国際武術連盟(IWUF)、Chen WS氏の提供

参加国・地域別 獲得メダル数(套路種目)

順位国・地域名合計
1中国香港62210
2中国6  6
3マレーシア5128
4ベトナム1315
5中国マカオ1247
6ミャンマー1225
7ロシア1214
8ウクライナ11 2
9日本 314
10中華台北 3 3
11シンガポール 112
12インド 1 1
13フィリピン 1 1
14アメリカ合衆国  33
15大韓民国  22
16スペイン  11
16インドネシア  11
18ブラジル    
18フランス    
18イタリア    
18スイス    
 合計22222165

第2回武術套路ワールドカップ大会(ミャンマー・ヤンゴン)日本代表選手団 成績一覧

種目 性別 氏名 所属 出身 出場種目と成績
1 南拳 毛利 亮太 大阪府 福岡県 南拳:9.20(8位)・南刀:9.28(9位)
2 長拳 大川 智矢 東京都 北海道 剣術:9.66(2位)・槍術:9.61(2位)
3 太極拳 荒谷 友碩 千葉県 千葉県 太極拳:9.31(9位)・太極剣:9.55(6位)
4 南拳 阪 みさき 大阪府 大阪府 南拳:9.16(4位)・南棍:8.77(4位)
5 長拳 池内 理紗 埼玉県 埼玉県 刀術:9.48(5位)・棍術:9.23(6位)
6 山口 啓子 東京都 大阪府 剣術:9.22(4位)・槍術:9.32(3位)
7 太極拳 齋藤 志保 岩手県 岩手県 太極拳:9.67(2位)・太極剣:9.54(4位)
8 監督 孫  建明 選手強化委員会 ヘッドコーチ
9 コーチ 孔  祥東 ジュニア普及委員会 ジュニアヘッドコーチ
10 審判 中村  剛 審判委員会副委員長・国際審判員