「第15回世界武術選手権大会」結果報告
国際武術連盟(IWUF)が主催し、中国武術連盟主管による「第15回世界武術選手権大会」が10月19(土)~24日(木)まで、中国・上海の上海閔行体育館において開催された。国際武術連盟の大使でもあるジェット・リー(李 連杰)氏も参加し、前日のオープニングセレモニーも含め、盛大に行われた。
また、大会には95の国と地域から約600人の選手が参加し、世界最高峰の戦いをみせた。
日本連盟は、套路競技に男子5人女子3人計8人の選手と監督・コーチ計4人、帯同審判員1人の合わせて13人を派遣した。本事業は、(公財)日本オリンピック委員会(JOC)選手強化NF事業助成を受けている。
来年11月東京で開催される「第3回武術太極拳ワールドカップ大会」への出場権を獲得
今大会は、来年11月に日本・東京で開催する「第3回武術太極拳ワールドカップ」への出場権をかけた大会でもあった。日本武術隊は、新しい選手も多い中で健闘し、女子太極拳で齋藤志保選手が銀メダルを獲得した他、11種目で出場権を獲得した。代表選手たちにはワールドカップでの大きな飛躍を期待する。
国際武術連盟諸会議に出席
大会期間中に国際武術連盟(IWUF)およびアジア武術連盟(WFA)の執行委員会とIWUF総会等の各種国際会議が開かれ、日本連盟から岡﨑温会長代行と近藤重和理事・事業委員会委員長が参席した。会議詳細は先月の記事を参考。
大会レポート 選手強化委員会
大事な大会が終わった。来年金メダルを目指しているワールドカップの、非常に大事な予選でもあった。選手自身の努力はもちろんのこと、連盟にも大きな支援をしてもらって来たが、20年以上の経験で一番よくない成績になってしまった。この結果はアマチュアである私たちの本来の姿であると再認識した。これを受け止めて今後の対策を考えた。
これまでアマチュアとして世界で戦う中で日本チームは高い評価を得るように成長して来た。しかし今回の大会では参加102か国中76もの国が套路競技にエントリーし、長拳男子には90人が出場した。選手数が非常に増えて、アフリカやヨーロッパ、これまでなかった国からも出場があった。全体のレベルが上がり、韓国、インドネシア、ベトナム、マレーシア、ロシアなどアジアを中心とした国々のすごい進歩が目立ち、日本の進歩は他と比べて少ない結果となった。プロ体制や進歩したチームが先に進化してしまい、取り残された形。これからどのような強化や訓練が出来るのか、これまで通りでなくシステムも改善していく必要があると思う。連盟の役員の方たちに財政の相談をしながら進めたい。
来年のワールドカップまであと1年もない。勝つと負けるは繰り返すが、今の日本にはメダルに繋がる安定した選手がいない。コートに立つだけで自信ある姿に見える存在感、コートに立つと普段とは別人になる必要がある。本番に懸ける強い気持ちを持つ人が今は不在。これが今のチームの問題。720度に挑戦してもミスしてしまう。普段の訓練で完成度が十分ではなく、単純なミスが多いことが問題。今の試合は少しのミスで10位より下がってしまう。規格の正確さが特徴だった以前の日本になることが目標。
できるかできないか、宝くじみたいな完成度では成功に繋がらない。完成している動作ができていたら自然に自信となる。普段の練習の質や環境を考え直してみてはどうか。学校や仕事ももちろん重要だが、競技の観点では練習量が最重要。コートでは日常は関係なく、技術だけが勝負。これからの日常を変える事が可能なら考えて欲しい。同じくアマチュアのマカオは必ず毎日の訓練を欠かさず進歩を続けている。特に成長した台湾、シンガポールも必ず毎日集中訓練している。日本での量は半分ぐらいと思われ、早く成長するには練習量が最重要。普段の量がないと中国へ訓練に行っても怪我をしてしまうことになり、今年は各選手が自費で準備をしたが自己管理の問題があると思う。世界は720度の完成度が上がっている。追いつくためには身体能力を上げることが最重要だが、練習とは別のトレーニングも必要になり、訓練時間を取ることが難しい。チームを作る時から戦略が必要と痛感した。新しい選手に交代するタイミングも重要。代表としての連続性があってこそ日本の顔になれる。そういう選手を育てたい。人材を育てる戦略が必要。
今回のチームは新しくて代表としての意識が低いと感じた。個人ではない集団として、代表として、自分は日本の顔という言動の全てに責任感が必要になる。コーチたちは日本のために働き、中国コーチも日本の事を一番に考えている。選手はどうなのか。選手たちには、人生で1回しかない機会に対して、自分はどう向き合っていくのか、しっかり考えてもらいたい。日本人としてのプライド、国を背負う責任感を自分は持っているか、部屋を一歩出たら日本代表になる意識を身に付けるべき。
昔と比べると、プロチームに近い待遇、環境を今は連盟に与えてもらっている。過去の改善は大きく実り、今回からはまたゼロからのスタートとして考え直す。中国のようにではなく、“外国選手のように” が目標となる。競技に負けても構わないが、気持ちで負けると進歩がなくなる。今回の結果は残酷だが、これからの経験となる事を望む。
これからの選手強化委員会としては、全日本の成績だけでなく、ジュニアで実施しているような代表選考会で、総合的な選抜方法も考えたい。次の世界選手権では伝統種目も視野に入れて、徒手と短器械、長器械を組み合わせるように、得意を考えた種目の組み合わせを検討し、メダルに近付けるように考えたい。特に来年のワールドカップに向けては、出場する選手のメダル獲得に向けた練習計画を急いでやりたい。出場する種目に優先的に対応しメダルに近付きたい。
大会の参加にあたり、ご支援ご協力をいただいた連盟の皆様、関係の皆様と応援に駆け付けてくださった多くのご家族に感謝を申し上げる。今後も切磋琢磨を続ける選手への応援を引き続きお願い致します。
第15回世界武術選手権大会(中国・上海)日本代表選手団と成績一覧
№ | 種目 | 性別 | 氏名 | 所属 | 出身 | 出場種目と成績 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 長拳 | 男 | 別當 響 | 大阪府 | 大阪府 | 長拳12位、刀術21位、棍術29位 |
2 | 三船 仁 | 福岡県 | 福岡県 | 長拳11位、刀術40位、棍術24位 | ||
3 | 三船 陸 | 大阪府 | 福岡県 | 長拳7位、剣術20位、槍術12位 | ||
4 | 女 | 山口 啓子 | 東京都 | 大阪府 | 長拳21位、剣術6位、槍術6位 | |
5 | 池内 理紗 | 埼玉県 | 埼玉県 | 長拳8位、刀術5位、棍術7位 | ||
6 | 南拳 | 男 | 朝山 義隆 | 大阪府 | 大阪府 | 南拳5位、南刀4位、南棍8位 |
7 | 太極拳 | 男 | 村上 僚 | 東京都 | 北海道 | 太極拳19位、太極剣9位 |
8 | 女 | 齋藤 志保 | 岩手県 | 岩手県 | 太極拳2位、太極剣5位 |