「FISUワールドユニバーシティゲームズ(中国・成都)」武術競技 結果報告

学生のオリンピックに2017年以来の参加!銀2個、銅3個のメダル獲得!

国際大学スポーツ連盟(FISU)が主催する「FISUワールドユニバーシティゲームズ(中国・成都)」武術競技が7月29日(土)~8月3日(木)[套路29日~30日、散打31日〜8月3日]の間に開催されました。全体では18競技267種目が実施されています。

武術競技は、四川省・成都市にある「成都市城北体育館」で行われ、日本連盟からは4人の代表選手と前東篤子監督、孔祥東選手強化委員会委員長の計6人が日本オリンピック委員会(JOC)の派遣で参加しました。また、国際武術連盟の指名で竹中保仁国際審判員が派遣されています。

競技初日男子太極剣に出場した蝦名冬馬選手は、大会の直前から調子を上げ、TEAM JAPAN初のメダルとなる銅メダルを獲得しました。翌日の男子太極拳でも力強い演技を見せましたが、世界選手権のメダリストやプロチームのアジア勢に0.007点差で僅かに及ばず4位となりました。

初日の午後には女子長拳、男子長拳が続けて行われ、古川萌華選手が完璧な演技で銀メダルを獲得し、チームに勢いをもたらしました。チーム最年少の中田琉月選手は、中国を筆頭とするアジアの強豪国を相手に実力を発揮して、4位と健闘しました。

古川選手の2種目目は翌日朝の女子剣術で、切れの良い演技を見せて銅メダルを獲得し、2種目ともにメダリストとなりました。中田選手の2種目目は男子棍術、減点リスクの高い種目だけに出場数が少なくメダルの獲得が期待されましたが、ミスの減点があり5位の結果となりました。庄司理瀬選手は、競技初日は女子太極拳に出場し、中国選手に次ぐ銀メダル獲得という素晴らしい演技を見せました。初の国際大会出場であり大変な緊張感の中で、チームで最初に試合に臨んだ蝦名選手のノーミスの演技からポジティブな影響を受けて、伸び伸びとした演技に繋がりました。庄司選手の2種目目女子太極剣では、中国、ブルネイに次ぐ銅メダルを獲得し、柔軟性を活かした難度を落ち着いてこなし、ライバルを抑えて健闘しました。

日本代表選手団(TEAM JAPAN)は競技への参加だけでなく、世界各国・各競技団体の選手やスタッフ、ボランティアの方々との交流も深め、無事大会を終了しました。

各選手の成績は次の表のとおりです。

「FISUワールドユニバーシティゲームズ(中国・成都)・武術競技」日本代表選手団名簿と成績一覧

人数 性別/役職 氏 名 学校名 所 属 出身 種目と順位
男子 中田 琉月 同志社大学 大阪府連盟 大阪府 長拳4位、棍術5位
  蝦名 冬馬 拓殖大学卒 東京都連盟 北海道 太極拳4位、太極剣3位
女子 古川 萌華 了徳寺大学 岩手県連盟 岩手県 長拳2位、剣術3位
  庄司 理瀬 東京学芸大学修士課程卒 秋田県連盟 秋田県 太極拳2位、太極剣3位
監督 前東 篤子 選手強化委員会 副委員長
コーチ 孔  祥東 選手強化委員会 委員長
審判 竹中 保仁 審判委員会副委員長・国際審判員
前東篤子監督、孔祥東委員長と日本代表選手たち

前東篤子監督、孔祥東委員長と日本代表選手たち

出発式では参考になる勝ち飯講話なども

出発式では参考になる勝ち飯講話なども

左上から、蝦名冬馬、庄司理瀬、古川萌華、中田琉月の各選手

左上から、蝦名冬馬、庄司理瀬、古川萌華、中田琉月の各選手

監督レポート:前東 篤子(選手強化委員会副委員長)

今大会は、第29回ユニバーシアード競技大会(2017台北)に次ぐ2度目の参加であった。武術競技の採点は、規格、演技レベル、難度それぞれの合計得点による順位決定ルールを採用する大会が多いが、前回今回とも無難度競技ルールが採用された。台北ユニバでは同様に4名の参加で銅メダル2個の獲得と全種目で5位以内入賞の結果を収めた。難度の採点が行われないルールとはいえ、演技レベルで高得点を得るためには難度を組み込み、その成功が大きな鍵である。成都ユニバでは、台北ユニバで行ったものよりも高い難度を安定してこなすことを最重要視した。コロナ禍により練習が行えない期間が生じた際には、身体面のトレーニングを主に行ったことで、難度だけでなく技術の向上にも繋がった。

2023年3月に選考会を実施し、2021年に開催予定であった成都ユニバの太極拳種目代表2名は引き続き代表に決定した。太極拳種目は技術の習得に時間が必要であり、太極拳選手にとって成都ユニバの延期は、技術の研鑽と未完成であった難度の精度を高めることに繋がり、有利に働くと思われた。長拳選手の選考については、2021年に成都ユニバの代表であった2名は杭州アジア大会代表に選抜され、これまでジュニア国際大会でメダルを獲得し実績を積んできた2名を新たに起用した。難度の採点がないルールでは、演技レベルの高得点と規格の減点ゼロが重要になる。完成度が高い難度を7~8割程度に絞って組み込み、大きな減点リスクを避けた上での高得点を全種目における目標とした。

選手4名中3名がメダリストとなり、2名は2種目でメダルを獲得した。今回の選手選考と大会対策の成果であり、引き続き国際情勢に合わせた研鑽を積んで次の機会に備えたい。メダルが期待された男子棍術では、演技レベルの得点が2位であっただけに、勢い余って自らミスを招いた減点が悔やまれる。常に安定した演技を行える訓練とメンタル面での強化が課題である。

参加選手の感想(一部抜粋)

庄司理瀬選手「今大会に参加することができて本当に嬉しく、誇らしい気持ちです。2021年から目標にしていた大会だったため、たくさんの準備と心構えをすることができました。今大会を運営してくださった大会関係者の皆様、日本団本部の方々、現地スタッフだけでなく、応援してくださった先生方や仲間たち、家族に心から感謝を伝えたいです。ありがとうございました。」

古川萌華選手「他国の選手は演武している際の表現力や風格などがすごく、見ている人を釘付けにしたり、とても印象に残るものでした。今回それを直に見て学ぶことができました。今大会を通して本当にたくさんの人に支えてもらったおかげで大会開催とともにこのような結果を残すことができました。誠にありがとうございました。今後また日の丸を背負えるように頑張ります。」

蝦名冬馬選手「コロナ禍を経て試合の挑み方も変わり、選考会や大会が本格的に再開した2022年からは順位や優劣ではなく「自分の演技に集中すること」「コンディションの波を作らないこと」などを意識していました。試合前からのケガがありましたが、TEAM JAPAN帯同の先生やトレーナーさんに診てもらい、より競技に集中できる環境を用意していただきました。感謝しています。」

中田琉月選手「本番では、緊張しすぎることなくいつも通りの演武ができたかなと思います。1種目目は減点されることなく、演技点も悪くなかったので、良かったと思いますが、2種目目ではミスをして減点されてしまい、獲りたかったメダルを逃してしまいました。とても悔しいですが、これからの経験に活かして、ミスをせずにいつも通りのパフォーマンスをできるようになるための練習をしていきます。」

竹中保仁審判員も国際武術連盟の要請で派遣

竹中保仁審判員も国際武術連盟の要請で派遣

メダルを獲得し喜びの顔をみせる3選手

メダルを獲得し喜びの顔をみせる3選手

大会公式ユニフォームに身を包んだ大会ポスター

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