「2024年アジア大学武術選手権大会(中国・ハルビン)」結果報告

初のAUSF主催大会で金メダル1個、銀メダル4個を獲得!

アジア大学スポーツ連盟(AUSF)が主催し、第1回大会となる「2024年アジア大学武術選手権大会(中国・ハルビン)」が6月16日~23日(競技は19日~22日)に開催されました。

日本連盟からは6人の代表選手と監督、コーチの計 6人が参加しました。また、国際武術連盟の指名で竹中保仁国際審判員が派遣されています。

大会では、西口直輝選手が自選太極剣で金メダル、池内佳奈選手が自選長拳・自選棍術の両種目で銀メダル、貴田菜ノ花選手が自選剣術で銀メダル、磯野水響選手が自選太極剣で銀メダルを獲得しています。

日本代表選手団(TEAM JAPAN)は競技への参加だけでなく、アジア各国の選手やスタッフ、ボランティアの方々との交流も深め、無事大会を終了しました。

各選手の成績は次の表のとおりです。

「2024年アジア大学武術選手権大会(中国・ハルビン)」日本代表選手団名簿と成績

  性別 種目 氏名 所属連盟 出身 大学(高専・専門学校)名 出場種目と成績
1 長 拳 中田 琉月 大阪府 大阪府 同志社大学 自選長拳7位
自選棍術5位
2 太極拳 西口 直輝 大阪府 兵庫県 早稲田大学 自選太極拳5位
自選太極剣1位
3 南 拳 薮本 佳輝 大阪府 大阪府 関西大学 自選南拳6位
自選南棍6位
5 長 拳 池内 佳奈 埼玉県 埼玉県 法政大学 卒 自選長拳2位
自選棍術2位
4 貴田菜ノ花 大阪府 兵庫県 神戸市外国語大学 卒 自選長拳4位
自選剣術2位
6 太極拳 磯野 水響 千葉県 千葉県 放送大学 自選太極拳6位
自選太極剣2位
7 役員・コーチ 孔 祥東 選手強化委員会 ヘッドコーチ
8 勝部 典子 同 コーチ
9 国際審判員 竹中 保仁 審判委員会委員長・国際審判員
「2024年アジア大学武術選手権大会(中国・ハルビン)」日本代表選手団

「2024年アジア大学武術選手権大会(中国・ハルビン)」日本代表選手団

<第1回アジア大学武術選手権大会>レポート

競技期間:6月19日(水)~22日(土)
競技会場:中国黒龍江省ハルビン市
《ハルビン華徳学院》
競技種目:自選套路徒手・器械 規定太極拳・器械伝統拳・器械 対練 散打
参加状況:アジア12ヶ国・地域 選手87名日本成績:金メダル1個 銀メダル4個

◇競技紹介

AUSFの主催としては初めての武術選手権大会。参加国や出場選手も多くなく、国際大会としてはそれほど大きな規模ではない。あくまでも大学生スポーツとしての「祭典」という印象。競技の他に『武術長短兵』という新しい対戦競技のデモストレーションが行われており、「誰でも気軽に取り組める武術」として普及させていくようだ。

盛大に実施された開幕式

盛大に実施された開幕式

対戦競技の武術長短兵

対戦競技の武術長短兵

◇日本チームについて

大学生または大学卒業生(卒業1年以内)という条件で選手を選抜し、日本チームは自選套路競技にエントリー。代表となった選手は、いずれも自選難度競技選手として訓練を受けているが、今回の大会は難度動作についての採点は行わないため、各自の套路から減点リスクとなり得る難度動作や連接難度を省いて再構成した套路で臨んだ。そのため、套路全体のリズムや体力配分、演技時間、また太極拳種目では音楽とのタイミングなどに多少なりとも影響が見られ、現地入りしたのちも各選手とも競技直前まで調整に余念がなかった。難度採点がない大会だからといって、簡単に取り組めるものではないということも明確になった。

[競技面]

難度の採点がないとはいっても、各選手の套路中には難度動作がいくつか入っており、跳躍した際には「角度」を取るよう無意識に身体が反応してしまうせいか、着地のミスにつながる場面もあった。また、実際の点数には反映されていないにしろ、ちょっとした動作でバランスを崩すといった小さなミスもいくつかあり、競技選手として更に完璧な演技をするために、どのような訓練をしてくかという課題も残った。 演技レベルの面では、国際大会出場経験の有無にかかわらず、各選手とも堂々とした迫力のある演技ができていたように見えたが、選手自身はそれぞれに不安や緊張もあったようだ。これから先、どんな大会でも臆することなく、訓練を受けてきたことに自信を持った演技ができるような選手として飛躍していくことを願う。

[会場の様子]

大学のバスケットボール館を使用した競技会場であったが、競技フロアには套路用コートと散打用コートが各1面と、表彰スペースも設置されていた。サブフロアにはコートが2面設置されており、套路選手だけでなく散打選手もウォーミングアップに利用できるようになっていた。サブフロアには競技場を映すモニターがあったが、通路を挟んだすぐ向かいだったため競技フロアへの行き来もしやすく、競技進行状況もすぐに把握することができた。 観覧席は簡易的な座席が設置されており、座席指定や仕切りがないため、誰が選手で誰が観客で誰がスタッフなのかわからない状態。防犯的に、荷物や貴重品、器械、表演服などの管理も不安ではあったが、日本から応援に駆け付けた選手のご家族に荷物番をお願いし、非常に助けられたことには感謝しかない。

会場には套路と散打が各1面ずつ

会場には套路と散打が各1面ずつ

観覧席の様子

観覧席の様子

[生活面]

食堂やコンビニなどが宿泊施設と同じ敷地内にあり、競技会場も徒歩で移動できる距離にあったため、大会期間中は特に不自由なことはなかった。選手団、審判団は同じ敷地内に宿泊し、食堂も同じ棟を利用していたが、競技期間中は選手と審判の食事フロアは別となっていた。

今回の部屋割りについて、男女ともが3人ひと部屋となった。各選手の競技日程が違う国際大会においては、一人ひとりの行動パターンが違うということも承知しており、その点は苦痛であっただろうと思うが、入浴や洗濯など室内での過ごし方も、男女ともに上手く工夫していたのはさすがと思う。

食堂はビュッフェ形式

食堂はビュッフェ形式

食堂の案内。選手と審判は別フロア

食堂の案内。選手と審判は別フロア

[その他]

競技期間の中盤に観光の日が設けられており、午前はハルビン工業大学にある宇宙博物館を訪問、午後はアジア最長の歩行者専用道路<ハルビン中央街>の散策という日程。翌日に競技を控えている選手もいたが、現地入りしてからの行動範囲が部屋と競技場との行き来だけということもあり、気分転換の意味も込めて、午後のみ全員参加した。散策中は、ハルビン名物のアイスクリームなどもあったが、競技が終わっていない選手がグッと我慢していたのには感服したと同時に、少し気の毒な気持ちになった。

ハルビン中央街散策

ハルビン中央街散策

[最後に]

冒頭では「大学生スポーツの祭典」と記述したが、大会運営に関しては、大会組織委員会やハルビン市、中国学生連盟などの全面協力のもと、特に混乱もなく終了した。学生ボランティアの数も多く、スムーズな競技進行に一役買っていた。おそらく担当ごとにきちんとしたマニュアルがあったのだと思われる。

10月横浜でのワールドカップにおいても、ボランティアスタッフを統率できるかどうかで、大会運営や競技進行の良し悪しに関わってくるのかもしれない。

今回、代表となった選手のほとんどのご家族が、現地へ応援に来られていた。競技会場の規模が小さかったことに加え、偶然にも宿泊ホテルが選手団と同じ敷地内の別棟ということもあり、いろいろな面で助けられることも多かった。もちろん現地に来られていないご家族や友人、チームメイト、恩師など、様々な方々が日本チームを応援していることは、所々で感じることができた。選手団はもちろん、選手を取り巻くすべての人々が「TEAM JAPAN」なんだということを、いま改めて胸に刻み、大会レポートを終える。

TEAM JAPAN

TEAM JAPAN