「2022年度春季強化合宿」を実施

4月30日~5月5日 東京・日本連盟トレーニングセンター

3つの国際大会の日本代表内定選手を中心に強化合宿を実施

(公社)日本武術太極拳連盟は4月30日(土)から5月5日(木・祝)の6日間、東京・日本連盟トレーニングセンターで春季強化合宿を実施しました。本事業は、(公財)日本オリンピック委員会(JOC)選手強化NF事業助成を受けて行われています。

今回の合宿は、国際大会の日本代表内定選手を中心に選手・コーチ合わせて総勢22人が参加し、合宿最終日の5月5日には、参加選手およびコーチを対象に、(公財)日本アンチ・ドーピング機構(JADA)発行のテキスト資料や過去の事例などを挙げ、アンチ・ドーピング講習やコンプライアンス講習も実施されました。

本合宿は競技力向上事業の一環として実施された

本合宿は競技力向上事業の一環として実施された

 

2022年度春季強化合宿 参加者名簿

No.種目 種目 性別氏名所属出身
1 第19回
アジア
競技大会
太極拳 男子 荒谷 友碩千葉県連盟 千葉県
2 女子 齋藤 志保岩手県連盟 岩手県
3 長拳 男子 別當  響大阪府連盟 大阪府
4 鎌田 慎ノ介北海道連盟 北海道
5 女子 池内 理紗埼玉県連盟 埼玉県
6 南拳 男子 毛利 亮太 大阪府連盟 福岡県
7 FISU
ワールド
ユニバー
シティ
ゲームズ
太極拳 男子 蝦名 冬馬東京都連盟 北海道
8 女子 庄司 理瀬秋田県連盟 秋田県
9 長拳 男子 今井 真秀 大阪府連盟 大阪府
10 女子 貴田 菜ノ花 大阪府連盟 兵庫県
11 第3回
ワールド
カップ
長拳 男子 三船  陸福岡県連盟 福岡県
12 南拳 男子 朝山 義隆 大阪府連盟 大阪府
13 東日本推薦 長拳 女子 古川 萌華岩手県連盟 岩手県
14 池内 佳奈 埼玉県連盟 埼玉県
15 西日本推薦 長拳 男子 高  龍大 大阪府連盟 大阪府
16 安良城 基睦 大阪府連盟 大阪府
17 役員・コーチ(6) 孔  祥東選手強化委員会 委員長
18 前東 篤子選手強化委員会 副委員長
19 孫  建明選手強化委員会 ヘッドコーチ
20 丹井  均同 コーチ
21 勝部 典子同 コーチ
22 中田 光紀同 コーチ

 

2022年度春季強化合宿 選手強化委員会レポート

はじめに

この合宿は、2022年度に開催予定の国際大会代表選手をメインとした訓練でしたが、合宿直後に各大会の延期が発表となりました。代表選手をはじめ関係各位におかれましては、非常に失意されていることとお察しいたします。新たな目標に向かって前進されることを願ってやみません。

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【期間】2022年4月30日(土)~5月5日(木・祝)

【会場】日本武術太極拳連盟トレーニングセンター

【訓練日程】

月日午前
(9:30~11:30)
午後
(14:00~17:00)
夜間
※設定なし
4/29(金)前泊
4/30(土)集合・訓練訓練休息
5/1(日)訓練訓練休息
5/2(月)訓練訓練休息
5/3(火)訓練訓練休息
5/4(水)訓練訓練休息
5/5(木)訓練・講習※解散

※アンチドーピング・コンプライアンス講習

目的

今回の合宿は、<第19回アジア競技大会><FISUワールドユニバーシティゲームズ><第3回ワールドカップ>各代表選手の集中した訓練に加え、東西強化委員会から推薦を受けた若手選手も参加し、次世代の育成も兼ねた。

<第19回アジア競技大会>および<第3回ワールドカップ>は開催まで期間があるため、一つ一つの動作を見直し、難度の正確さを追究し、成功率を上げていくことに重点を置いた。

<FISUワールドユニバーシティゲームズ>は開催日程が2ヵ月半後に迫っているため、訓練を出場種目のみに絞り、演技を通す中でのレベルアップをメインとした。この大会では、套路に難度動作を入れることが必要とされないため、規格減点をなくすことに焦点を絞り、リズムや表現力といった武術本来の動きを向上させ、演技レベルの評価点を上げることに努めた。

若手選手はベテラン選手と一緒に訓練を受けることで、より高いレベルの難度動作や、競技套路のリズム・表現力などを学んだ。「国際大会の日本代表」という目標がより近く現実的に感じられる環境に身を置き、緊張感を持った訓練を行った。今後の選手育成に繋げ、レベルアップを目指す。

合宿最終日には、強化コーチによるアンチドーピング・コンプライアンス講習を行い、強化指定選手・日本代表選手としての責務と自覚の再認識に向けた質疑応答を行った。

成果

数日間ではあるが、連続したコマでの訓練により、各選手の基本的な体力や回復力を知ることができた。また、動作や套路構成などを集中して見直すことができ、週数回の通常訓練では手をつけられなかった部分も改善された。

若手選手も、体力面・技術面において代表選手をしのぐ力を見せており、着実に次世代の選手も育っていると実感できた。

3年ぶりに実施した合宿訓練の目的はしっかり機能したと考える。今後の競技において力が発揮できた時こそが、最終目標の達成である。

アンチドーピング・コンプライアンス講習は、選手からも積極的に質問が出て、予定していた時間を過ぎるほどだった。それだけ身近な問題となっているのだと思う。特にSNSに関しては、誰もが簡単に行える発信手段であるため、強化指定・日本代表という「公」の立場においては、常に危険と隣り合わせであるということが理解できたのではないか。

課題

武術太極拳の競技採点は、規格・演技レベル・難度の3項目である。国際大会においては、規格と難度のミスが少なくなっている現状で、勝負は演技レベルの評価となってきている。

日本の選手は動作規格のミスが少なく、難度もこなせているものの、なかなか表現力を出すことができずにいた。武術としての動作を理解し、徒手・器械それぞれの基本を再確認し、オーバーアクションではなく、動作と意識が正しく協調できるように努めたい。

さらに、難度のランクを上げていくことも重要な課題となっている。

現在の最高ランクはD難度であるが、国際的に見ても男子ならC難度、女子でもB難度は普通のレベルとなっている状況で、日本の選手はC難度を軽々とこなせる選手がまだ数えるほど。女子に至っては、B難度もギリギリの状態。難度を成功させたとしても、その表情には必死感が現われ、競技者としてのパフォーマンスに欠ける。

単に身体能力を強化するだけではなく、難度動作を行う際の身体の使い方や、助走~跳躍~着地までの力学的原理など、いろいろな角度からの研究が必要となってくる。

また、バランスを崩すなどの初歩的ミスも少なくない。重心移動の失敗だけでなく、極度の緊張や力み過ぎからくる場合もあり、大舞台に臨む精神面のコントロールもまだまだ未熟である。

緊張や不安は練習不足からくることが多いが、その「不足」は練習時間だけではなく、練習の中身(質)のことでもある。アマチュア競技の限られた訓練時間の中で、効率よく動作を習得し、問題を見つけ、弱点を克服していくことが選手の課題である。同時に、そのような訓練を提供することは指導者側の課題でもある。

2022年5月
選手強化委員会