「2022年度冬季ジュニア東西強化合宿」を実施
東西に分かれジュニア選手合計32人が参加
日本連盟は昨年末、12月26日(月)~28日(水)の3日間にわたり、「2022年度冬季ジュニア東西強化合宿」を開催しました。この事業は、(公財)日本オリンピック委員会(JOC)の選手強化NF事業助成を受けて実施しています。
新型コロナウイルス感染拡大のため、2019年以降中止となっていたジュニア強化合宿を安全に開催するため、今までは1ヶ所だった合宿拠点を3密を避けて2ケ所に設け、東日本ジュニアは東京、西日本ジュニアは大阪に分かれた上で、感染症対策を徹底して行いました。
今回の合宿には3つの年齢区分(A・B・C)のうちA・Bの男女ジュニア選手32人が参加し、日本連盟選手強化委員会から、前東篤子副委員長をはじめとする各コーチが指導にあたりました。最終日には、東は中田光紀コーチ、西は下起悦郎コーチによるアンチ・ドーピング/コンプライアンス講習も実施されました。
来年度のジュニアの全国大会は、4月22日・23日に大阪府熊取町のひまわりドームで「第31回JOCジュニアオリンピックカップ武術太極拳大会」を開催予定です。国際大会では「第11回アジアジュニア武術選手権大会」が8月に中国香港で開催される予定です。ジュニア選手たちの活躍を期待します。
2022年度冬季東日本ジュニア強化合宿レポート(選手強化委員会)
目的
今回の合宿は2023年4月に実施されるJOCジュニアオリンピックカップ武術太極拳大会で初めて採用される『2019年国際ルール』に選手が対応することを目的とし、参加選手については第8回世界ジュニア武術選手権大会(インドネシア)日本代表選手、強化委員会から指定を受けた各ブロックのジュニア選手を対象とし、2019年国際ルールに対応した訓練を徹底的に行った。
ジュニア国際の年齢区分は、A組・B組・C組に分かれており、特にA組については高い難度動作に対応するための身体能力が必要となるため、多様なフィジカルトレーニングのプログラムを用意し、厳しい練習で養う強いメンタルや体力を上げることにも重点を置いた。
選手の大半が初めての合宿となるため、集団行動や生活面など練習以外の面でも規律ある行動を心掛けさせた。また練習中はお互いに競い高め合い、アスリートとしての自覚を持たせた。
アンチ・ドーピング/コンプライアンス講習は、クリーンアスリートガイドを用いて、武術太極拳選手としての社会の繋がりや役割をジュニア選手でも分かり易いように講習を行った。
成果
1日目は、今までのルールと2019年ルールの違いを選手たちに説明し、どのようなミスで減点されるのかを理解させ規格減点を無くすことの重要性を伝え、各拳種の動作名称の意味を確認することで武術本来の技の意味を理解し演技レベルの向上に繋げた。
2日目からは武術基本功・フィジカルトレーニングを徹底して行い、練習量においても通常練習ではできない質の高い訓練を行うことで技術・体力ともに高めることができ、動作を正確に反復して行うことで悪い癖を改善することに努めた。
最終日の講習では各選手が、強み(長所)弱み(短所)JOCジュニア大会までの日数(練習時間)の表を作り再確認し具体的な改善点を見つけ出し、合宿の成果を継続していけるよう、各選手が自己分析を行い新たな目標を掲げた。
アンチ・ドーピング/コンプライアンス講習では、元日本代表選手のコーチがアスリートとしてのルール・健康について経験や具体的な例を挙げて説明し、SNSについては武術太極拳強化選手として常に社会から見られ、善い行いは評価され、独りよがりの行動や間違った行いは信用を無くし社会からの批判があることなどを説明した。
課題
ジュニア大会は規定套路であるため、動作規格が最も重視される。2019年ルールでは更に細かい規格減点が増えたため、今まで減点されていない手型・歩型に癖があったり、柔軟性の乏しい選手は容易に減点となるため、緻密で正確な動作が課題となる。
国際大会での上位選手はA組(動作規格)は5点満点のノーミスが当然で、メダルを狙うためにはB組の演技レベルが重要となり、高い身体能力と武術としての風格が要求されるため、フィジカルを鍛える練習環境や練習時間を確保することが重視される。
また成長期の身体的特徴を把握しスポーツ傷害予防のトレーニング、ケガをした後のアスレティックリハビリテーションなども重要な要素となる。
2022年度冬季西日本ジュニア強化合宿レポート(選手強化委員会)
目的
今回の合宿は、12月3日〜11日インドネシアにて開催された<第8回世界ジュニア武術選手権大会>の約2週間後に行われた。2023年度には<第11回アジアジュニア武術選手権大会>が開催予定となっており、今年度ジュニア日本代表選手に加え、強化委員会から推薦を受けたジュニア強化指定選手も参加し、ジュニア層全体の更なるレベルアップを図った。
今回の<第8回世界ジュニア武術選手権大会>では実施種目の年齢枠がこれまでよりも低年齢化されたものがあったため、来年度以降も各大会の開催要項次第では、より低い年齢の選手がこれまでよりもひとつ難度の高い種目へエントリーできるよう備えておく必要があった。
そのためには、更に細かな技術レベルと、より高い身体能力を備えておく必要があり、技術的なブラッシュアップと体力強化を狙った訓練の両方を今合宿のカリキュラムに盛り込んだ。
もう一つジュニア選手育成に関して重要な点は、学業や他の活動と両立しながら高いレベルで競技を続けていくことである。そのために武術本来の楽しさに加え、同年代の仲間と時に競い合い、切磋琢磨する良い緊張感へ導くことに努めた。
最終日のアンチ・ドーピング/コンプライアンス講習では、アクティブラーニングを多く用い、ジュニアであっても日本代表選手や強化指定選手であれば必然的に生まれる、『選手自身の価値』また『武術太極拳ひいてはスポーツ全体の価値を負う責任』について選手それぞれが誇りを持って守って行けるよう根本的な価値教育に重点を置いた。
成果
3日間ではあるが連続した訓練により、各選手の基本的な体力や回復力を把握することができた。
また、記憶の新しいうちに習得したことを復習、発展させることができ、この点も合宿として集中的に訓練を行った成果であったと考える。選手にとっては、練習量や、努力のベクトルなど、それぞれ日頃身を置く環境を見直す良い機会となったと推察する。
国際大会を終えたばかりの選手と共に過ごす数日は、他の選手にとって日本代表というステージを身近に感じ、自分の課題をより鮮明に見つめる良い機会となったように見受けられた。こうした緊張感の一方、所属や年齢に関わらず、訓練中に声を掛け合ったり、休息時に交流する姿が見られ、縦横の繋がりが強化されたようである。
特に西日本ジュニア強化指定選手にとって、合宿や強化訓練以外の環境で過ごす時間は圧倒的に多く、上記のような技術的な情報や気付き、またライバルとの繋がりを得たことが、僅か数日間の合宿での最大の成果と言える。今合宿を経て、来年度行われる競技会において各選手の力が発揮されることにより、合宿の真の成果が実ることに期待する。
アンチ・ドーピング/コンプライアンス講習では、終盤へ向けて積極的に意見を交わす姿が見られ、強化指定選手としての自覚が芽生えたようである。講習後には早速、冊子に目を通したり、自身の常備薬を確認する姿があった。
課題
来年度国内でも<第31回JOCジュニアオリンピックカップ武術太極拳大会>において新しい競技ルールに基づいて競技が行われる。これは従来のルールに比べ、より細かなミスに対する減点が行われるもので、選手は更に正確に、求められた動作規格を表現しなければならない。
今回の<第8回世界ジュニア武術選手権大会>を見ても、この動作規格の減点が勝敗を分けており、国際大会で表彰台を目指し、更にはシニアでの活躍を視野に入れるとなると、この規格減点への対策は重要である。とはいえ、減点を避けるあまり、演技レベルを度外視することはできない。
高い身体能力と表現力を活かして演技するハイパフォーマンスと、減点を抑えて演技を最後まで完成させるハイスタンダードを両立させて行くことがトップ選手に求められる課題である。
この課題を克服するため、選手は持てるパフォーマンスを日頃から完全に自分のものとなるまで繰り返し実現し、試合本番に備えておく必要がある。そのためには日々一定のコンディションを保つことが重要であるが、これは心身ともに変わりゆく年代のジュニア選手たちにとって特に難しい課題である。また学業やその他の活動と両立して、一定の練習量を確保し続けなければならない。
選手においては、自身の心身のリカバリーや傷害への対策も含めたコンディショニングに努め、単なる習い事の域を越え、一スポーツ選手として生活全体のマネジメントが求められる。
そして指導者においては、時に保護者の協力も得ながら理解と努力を促し、武術太極拳指導の枠を超えて運動生理学、栄養学、トレーニング・コンディショニングに関する知識の拡大に努め、広い視野でコーチングして行く必要がある。
合宿では、数日間寝食を共にする中で『運動』『栄養』『休養』をセットにして伝えることができる。上記のような課題を具体的に確認することを、次回以降の強化合宿の課題としたい。
2022年12月 選手強化委員会
冬季ジュニア東西強化合宿 東日本参加者名簿
№ | 区分 | 氏名 | 性別 | 種目 | 所属 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | A | 高山 蓮 | 男 | 長拳 | 刀術 | 棍術 | 栃木県 |
2 | A | 大木 宙 | 男 | 長拳 | 刀術 | 棍術 | 埼玉県 |
3 | A | 福島 沙憲 | 男 | 長拳 | 刀術 | 棍術 | 群馬県 |
4 | A | 福田 瑛久 | 男 | 長拳 | 刀術 | 棍術 | 埼玉県 |
5 | A | 田中 壮流 | 男 | 長拳 | 剣術 | 槍術 | 北海道 |
6 | A | 和野 絢 | 女 | 長拳 | 剣術 | 槍術 | 岩手県 |
7 | B | エスコバル登亜 | 男 | 長拳 | 刀術 | 棍術 | 東京都 |
8 | B | 小松 桜弥 | 男 | 長拳 | 刀術 | 棍術 | 神奈川県 |
9 | B | 鈴木 峻太 | 男 | 長拳 | 刀術 | 棍術 | 埼玉県 |
10 | B | 綿貫 謙 | 男 | 長拳 | 刀術 | 棍術 | 埼玉県 |
11 | B | 石井 思初 | 女 | 長拳 | 剣術 | 槍術 | 東京都 |
12 | B | 大槻 紅白 | 女 | 長拳 | 刀術 | 棍術 | 群馬県 |
13 | B | 河合 莉呼 | 女 | 長拳 | 剣術 | 槍術 | 東京都 |
14 | B | 佐藤 千尋 | 女 | 長拳 | 剣術 | 槍術 | 栃木県 |
15 | B | 鈴木 さくら | 女 | 長拳 | 剣術 | 槍術 | 北海道 |
16 | A | 大河内 天欧 | 男 | 南拳 | 南刀 | 南棍 | 東京都 |
17 | B | 岡本 泰次郎 | 男 | 南拳 | 南刀 | 南棍 | 東京都 |
コーチ
1 | 神庭 裕里 | 選手強化委員会ジュニアヘッドコーチ |
2 | 高山 宗久 | 同 コーチ |
3 | 中田 光紀 | 同 コーチ |
冬季ジュニア東西強化合宿 西日本参加者名簿
№ | 区分 | 氏名 | 性別 | 種目 | 所属 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | A | 上山 颯真 | 男 | 長拳 | 剣術 | 槍術 | 兵庫県 |
2 | A | 大岸 安穏 | 男 | 南拳 | 南刀 | 南棍 | 大阪府 |
3 | A | 貴田 胡花 | 女 | 長拳 | 剣術 | 槍術 | 兵庫県 |
4 | A | 久下 瑠那 | 女 | 長拳 | 刀術 | 棍術 | 大阪府 |
5 | A | 古賀 涼太郎 | 男 | 長拳 | 剣術 | 槍術 | 愛知県 |
6 | A | 小櫻 果 | 女 | 長拳 | 刀術 | 棍術 | 広島県 |
7 | A | 新小田 広希 | 男 | 長拳 | 刀術 | 棍術 | 大阪府 |
8 | A | 瀧田 恵里花 | 女 | 南拳 | 南刀 | 南棍 | 鳥取県 |
9 | A | 松本 圭太郎 | 男 | 南拳 | 南刀 | 南棍 | 石川県 |
10 | A | 丸山 響生 | 男 | 長拳 | 刀術 | 棍術 | 兵庫県 |
11 | A | 山田 ももこ | 女 | 長拳 | 剣術 | 槍術 | 岐阜県 |
12 | B | 加藤 元気 | 男 | 長拳 | 刀術 | 棍術 | 岐阜県 |
13 | B | 門脇 テテ | 女 | 長拳 | 刀術 | 棍術 | 鳥取県 |
14 | B | 白川 奏那 | 女 | 長拳 | 刀術 | 棍術 | 兵庫県 |
15 | B | 竹澤 成悠 | 男 | 長拳 | 剣術 | 槍術 | 富山県 |
コーチ
1 | 孫 建明 | 選手強化委員会ヘッドコーチ |
2 | 前東 篤子 | 同 副委員長 |
3 | 下起 悦郎 | 同 コーチ |
4 | 丹井 均 | 同 コーチ |